「レズビアンカップルの育児は異性カップルの育児に劣らない」米研究で

アメリカの研究で、「レズビアンカップルの育児は異性カップルの育児に劣らない」という結果が得られたというニュース。

この研究を行ったのはニューヨーク大学社会学者Judith Stacey氏とTimothy Biblarz氏。伝統的家族で育てられた子供と同性カップルに育てられた子供の生育結果を比較するさまざまな文献を5年がかりで調査した結果、「本質的な違いはまったく存在しない」という結論に達したとのこと。この調査結果は、2010年1月22日(金)に、the Journal of Marriage and Familyに掲載されたそうです。

この研究は、両氏が2001年に発表した「両親の性的指向はどれぐらい重要か(How Does The Sexual Orientation of Parents Matter?)」という研究のフォローアップとしておこなわれたもの。2001年の研究で得られた「あまり重要でない」という結果に同意しない人々が科学的データを探し回り始めたため、今回の研究に着手することになったとのこと。


「合衆国では、とりわけ政策立案者たちは……いつも、『研究によると……』と言って(同性婚反対の)意見を切り出します」とStaceyは言った。「でも、その研究というのはほとんど、男女の既婚カップルに育てられている子供たちと、離婚した親や最初から結婚していない親を持つ子供たちを比較しただけのものなんです。まったくアンフェアです。
「彼らはそうした研究をもとに推測をおこなっているわけですが、これらの研究から概して言えることは――ここが重要なのですが――2人の親を持つことは通例、1人しか親がいないより良いということです。いつでも必ずそうだというわけではありません。それはまた別の、もっと複雑な話になります。しかし、(親たちが)男性か女性かということはまったく関係ないということは確かです」
“In the U.S. especially, policy makers ... always start their (anti-gay marriage) argument with, ‘Research proves...,’” Stacey said. “But that research is almost exclusively research that compares children with two married parents to children whose parents divorced or never married. It’s completely skewed.
“They were extrapolating from those studies, which can say, on average – and that’s an important qualification – two parents usually are better than one. Not always. That’s another, more complicated story. But it certainly has nothing to do with whether (the parents are) male or female.”

Stacey氏とBiblarz氏は、今回の調査で、子供を持つレズビアンカップルについての81種の研究結果を精査したとのこと(Stacey氏によると、ゲイ男性のカップルによる育児が増え始めたのは最近のことで、子供の成長結果を調べるにはサンプル数が少なすぎるんだそうです)。どの研究も例外なく、レズビアンカップルの育児は概して異性カップルの育児と比べて劣るところはないと結論づけていたそうです。レズビアンカップルは異性カップルよりもたくさん子供と遊び、体罰はより少なかったとのこと。また、レズビアンカップルの子供は、異性カップルに育てられた子供より多様性に対する受容度が高かったそうです。

ちなみに「父親不在の少年」は女々しくなるとか弱虫になるとかいう俗説に対しては、Stacey氏は「何の証拠もない」と述べています。「同性愛者カップルの子供はいじめの対象になる」という説については、「エヴィデンスはほとんどありません。それに、これはよくある予言の自己実現ではないでしょうか」ということです。

なお、レズビアンカップルに育てられた子と異性カップルに育てられた子の間に差があるとすれば、前者の方が後者より少しだけ暮らし向きが良い(幸福度が高い?*1)ということなんだそう。

そんなわけで、少なくともこの研究では同性同士のカップルが子育てをするメリットこそわずかにあれ、デメリットは発見されなかったみたいです。そう言えば、少し前に発表された英国の研究でも、「レズビアンカップルは異性愛者よりもよい両親となる」という結果が出てましたね*2。で、Fathers4Justiceという父親の権利運動団体が「父親が周辺的な地位に追いやられ、子供の人生から締め出されてしまう」「これはジェンダーによるアパルトヘイトだ」と噛みついていた*3という。こういう父親たちは、今回のStacey氏とBiblarz氏の研究を熟読するといいんじゃないでしょうか。Stacey氏は


子供との触れ合いに関して言うと、2人目の女性の親(子供を産んでいない方の母親)は、子供と血がつながった異性愛者の父親よりアクティブです。さらに、レズビアンカップルは概して、ヘテロカップルよりもやや公平に家事や仕事を分担する傾向にあります」
the second female parent (the mother who did not give birth) tended to be more actively involved than the biological heterosexual father, in terms of contact time with their children. Plus, lesbian couples, on average, tend to share domestic and economic responsibilities a little bit more equally than heterosexual couples did.”
と語ってますから、周辺に追いやられたくないお父さんたちももっと子供と触れ合い、パートナーとより公平に家事と仕事をシェアすればいいんじゃないの。腰振って射精するだけで「父親でござい、ホモやレズより立派な親でござい」なんて威張っていられる時代は終わりつつあるんじゃないかな、もう。

単語・語句など

単語・語句 意味
sift through 〜を入念に調べる
substantive 本質的な
cast around search far and wide (physically or mentally)
skewed not accurate or correct/directed towards a particular group, place, in a way that may not be accurate or fair
extrapolate 推定する
an important qualification 重要な資質
discernible 認められる、識別できる、見分けられる
debunk うそ(まやかし)をあばく、偽り(誤り)をあばく
veer …の方向を変える