『アナと雪の女王』日本語吹き替え3D版感想(※ネタバレあり)

Frozen(Blu-ray+DVD)北米版 2014 [Import]

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先日字幕版2Dで見たアナと雪の女王』を、今度は日本語吹き替えの3D版で見てきました。やっぱり面白いわー。新たに気づいたことを3つだけ抜き出すと、こんなです。

  • 3Dで見ると氷と雪の質感が全然違う。ほとんど別の映画に見えるぐらい違う。できる限り3Dで見るべき!!!!!!!!!!
  • 日本語訳詞、極力キャラの口の形に合うように配慮されてるんですね。原詞と多少意味が変わってしまうのは仕方ないかも。そして松さんと神田さん、どちらもうまかったです。
  • 今回は時計を見ながら「ポイントとなる場面はそれぞれ開始後何分あたりの位置にあるか」を見てたんだけど、脚本の構成、とことん手堅いわ。さすがディズニー。

3番目についてちょっと補足すると、もとはと言えば、「「Let It Go」って『ウィキッド』の「Defying Gravity」に相当するよね」(歌詞の内容的にも、歌ってる人的にも)と思ったことがきっかけで、「じゃ、あそこが第1幕の終わりなのかしら」と全体の構成を考えながら見てたんですね今回は。そしたら、「Let It Go」はもちろん、他の部分もものっそい手堅く配置されていることがわかりました。ブレイク・スナイダー風に分析すると、こんな感じ。

(※以下、ネタバレを含みます)

  1. 第1幕
    1. オープニング・イメージ
      • 氷運びの場面。場所が北欧であることが示され、歌詞の中で「愛」と「恐れ」という重要なテーマが暗示される。
    2. テーマの提示
      • エルサの力を隠そう、と父親。「本当の自分を隠すのは、正しいことなのか?」というテーマ登場。トロールの"The heart is not so easily changed. But the head can be persuaded."という台詞が、実はアナとエルサ両方にとっての伏線となっている。
    3. セットアップ
      • 時の経過を表す「Do You Wanna Build a Snowman?」の場面。アナとエルサの性格の違いと、失われぬ姉妹愛を提示。
    4. きっかけ
      • 王と王妃がなくなり、エルサが即位することに。
    5. 悩みのとき
      • 「For the First Time in Forever」の場面。アナのこれまでの孤独と、エルサの「力を見られてはいけない」という苦悩が描かれる。
    6. 第1ターニング・ポイント
      • アナはハンスと恋に落ち、エルサの力が暴走。
    7. お楽しみ
      • 「Let It Go」の場面。
  2. 第2幕
    1. サブプロット
      • アナとクリストフの出会い。「出会ったばかりの人と結婚するのは、真実の愛なのか?」というテーマ登場。
    2. ミッドポイント
      • アナ、氷の城でエルサと対峙。心に氷のかけらが刺さってしまう。
    3. 迫り来る悪い奴ら
      • 氷の城に追っ手現る。
    4. すべてを失って
      • エルサは牢につながれ、アナはハンスに捨てられる。
    5. 心の暗闇
      • エルサはアナが死んだと思い込む。アナは死にかける。
    6. 第2ターニング・ポイント
      • メインプロット(エルサの物語『本当の自分でいていいのか?』)とサブプロット(アナの物語『真実の愛とは?』)が融合。エルサとアナを同時に両方救う手だてが、ふたつのプロットを結びつける。
  3. 第3幕
    1. フィナーレ
      • エルサの力が国中の皆に受け入れられる。アナは愛をみつける。ふたりとも教訓を学び、直すべき点が変わっている。
    2. ファイナル・イメージ
      • 雪や氷と調和するアレンデール王国。

今、iTunesStoreで購入してある北米版『アナと雪の女王』(ていうか『Frozen』ですね)を見ながらもう一度確認したんですけど、この映画、上記15の要素がもれなく押さえられているだけではなく、どの部分にどれだけの時間を割くかについてもみごとに定石通りなんですよ。当然すべて計算し尽くした上でこうした構成にされてるんでしょうけど、そりゃ、大ヒットもするわ。

もちろん、どんな構成&脚本にしようとヘテロエンドじゃないと気に入らない人や、逆にアナとクリストフのキスが気に入らない人、ミュージカルという表現形式そのものが理解できず「なぜ登場人物が突然歌い出すのだ!」とか言っちゃう人(アナタそれ、歌舞伎を見に行って『なぜあんな変な化粧をしているのだ!』と隈取りに文句をつけるのと同じですぜ)、CGアニメーションだというだけで「人の手のあたたかみがない」などと言い出す人(アナがブランコに乗る場面なんて、アニメーターさんが公園で大声で歌いながらブランコ漕いでビデオに撮って、それを見ながら2ヶ月かけて作ってる*1のに!)(氷柱が伸びる場面だって、プログラムに機械的に描かせて終わりではなく、モデラーさんがひとつひとつ『形や質感がより氷らしくなるように』と直して完成させてんのよ*2!!)etc. とかには届かない話かな、とは思いますけどね。でもあたしの胸にはこれ以上なく届いたし、うちの近所の小学生たちにもがっつり届いている模様。日本語版の「れりごー」大合唱しながら遊んでるもん、彼ら。結局のところそれがいちばん大事だし、それで十分だと思います。

できたら次は字幕版を3Dで見たいなあ。せめて英語版の「Let It Go」をカラオケで歌えるようになろうと思って、今、練習中です。

*1:ソース:『アナと雪の女王』パンフレット

*2:ソース:『アナと雪の女王』パンフレット