『放浪息子(14)』(志村貴子、エンターブレイン)感想

放浪息子 14 (ビームコミックス)

放浪息子 14 (ビームコミックス)

せまりくる性愛の予感。マコちゃんもいい味出してます

二鳥くんもその彼女のあんなちゃんもお年頃。やはり性愛の話題は避けては通れません。というわけで、13巻で張られた伏線が順調に回収され始めています。こういう展開を嫌ったり、「二鳥くんは女の子になりたいはずなのになぜ」と混乱したりする人もいそうですが、あたしはいいと思うなあこれ。セックスは大事だし、興味や欲望をいつまでも棚上げにしておけるもんでもないし。第一、本人のアイデンティティーやジェンダー表現がどうであろうと、それはそれ、これはこれ。好きにすりゃあいいのよ。

あと、マコちゃんがいい味出してました。13巻の感想で、「放浪息子は二鳥くんも高槻さんもかんたんにパスできちゃうところがズルい」(大意)てなことをちょこっと書きましたが、そうだった、この漫画にはマコちゃんという重要キャラがいるんだった。13巻のマコちゃんは、にとりんみたいに豪胆でもなくかわいくもない、それでいて女の子にはなりたい男の子というポジションを遺憾なく演じ切っていて、よかったです。

マコちゃんを囲む、ユキさんや有賀家のお母さんの発言がいちいちステキだったところも印象的。というのはこれ、体育大会での二鳥くんのお母さんの反応と対になっていると思うから。こうしてみると、二鳥くんとマコちゃんとで恵まれているのはどっちだかわかんなくなってきますね。このへんのテーマは「パス(社会から、本人が希望する性で見られること)はどこまで重視すべきか」「パスできればそれですべてOKなのか」という現実でもよく議論されている問題ともリンクしていて、そんなところも侮れない14巻なのでした。