チリのモーテルがレズビアンカップルの宿泊を拒否 同国初の反差別法の対象か


チリのレズビアンカップルが、性的指向を理由として同国のモーテルで宿泊拒否されたと訴えています。チリでは7月に反差別法が成立しており、この一件は同法が適用される初の事例となる可能性があるそうです。

詳細は以下。

このカップルはパメラ・サパタ(Pamela Zapata)さんとカルラ・デ・ラ・フエンテ(Carla de la Fuente)さんといい、ふたりとも大学生だそうです。彼女らがチリのプロビデンシアにあるモーテル「 Marin 014」に泊まろうとしたところ、以下のようなことが起こったとのこと。

  1. 受付から離れた場所に連れて行かれ、待つように言われる。
  2. 待っている間に、異性同士のカップルが到着してすぐチェックイン。
  3. その後になって、「空室はない」と言われる。
  4. さらにその後、別の異性カップルがチェックイン。
  5. サパタさんとフエンテさんがホテルの従業員と議論していると、警備員がやってきて、規則により同性カップルの宿泊は認められないと言い出した。

これ、二重の意味で筋が通らないんですよ。まず、本当に規則で宿泊させられないのだとしたら、そもそも最初からこのカップルを遠くで待たせる必要などなかったはず。単に嫌がらせをしたかったのなら別ですが。さらに、チリでは2012年7月に制定された反差別法により、ジェンダーまたは性的指向にもとづく差別は違法なんです。よって、本当にそういう規則があったとしても、規則そのものの合法性が疑わしいということになります。

チリの反差別法は、ネオナチから暴力を受けて惨殺されたゲイ男性ダニエル・サムディオ(Daniel Zamudi)さんにちなんで「サムディオ法」(Ley Zamudio)と呼ばれているとのこと。この法に違反した場合、183万2千チリペソ(日本円で約30万円)以下の罰金となるそうです。

サパタさんとフエンテさんは、モーテルから受けた扱いに「不愉快で、非常に屈辱的な思いをした」として、同性愛者の権利団体Movement for Homosexual Integration and Liberation (Movilh)の助力のもとに訴訟を起こしています。一方「Marin 014」のスタッフは、Chilevisiónに対し、「同性カップルを見た宿泊客から苦情を言われたことがある」と話しているそうです。「自分たちは差別しないが、客がいやがるから仕方ない」という、典型的な責任回避ですね。これを看過したら何のためのサムディオ法かわからないので、チリの司法機関にはがんばってもらいたいです。

なお、この手のニュースを見て「ホテルにも客を選ぶ権利が」とか言い出しちゃう日本人の方は、日本の旅館業法の第5条を読まれるといいかと思います。以下、総務省が運営しているポータルサイトe-Gov(イーガブ)から引用。


第五条  営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
一  宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
二  宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
三  宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

実際、大阪で同性カップルのダブブルーム宿泊を拒否したホテルが、旅館業法違反であるとして保健所から改善指導されたという事例がありますよ。日本でだって認められていないんですよ、こんなのは。