トランスジェンダー団体、トランスのモデルのゲイ・プライドTシャツ広告に反対
米国の衣料品メーカー「アメリカンアパレル」は、LGBT団体GLAADと提携し、ゲイ・プライドTシャツを製造販売しています。このTシャツは、胸の部分に「GAY O.K.」(『ゲイはOK』)、「Legalize Gay」(『ゲイを法的に認めよ』)などと印刷したもので、収益の15パーセントが直接GLAADに寄付されます。2012年には、トランスジェンダーで人気TV番組『アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル』出身のアイシス・キングさんが広告モデルに採用され、話題となりました。
しかしながらトランスジェンダー団体の「MAGNET」(Media Advocates Giving National Equality to Transgender & Transsexual People)は、キングさんの採用に不満を覚え、このTシャツのボイコットを呼びかけているそうです。この広告はトランスジェンダーを不可視化し、ゲイと混同させてしまうというのが同団体の主張。
詳細は以下。
広告ではトランスジェンダーのモデルであるアイシス・キングがこのTシャツを着ているのだが、MAGNETのアシュリー・ラヴ会員は、キングはトランスジェンダーだが異性愛者でもあるから、このTシャツは性的指向とジェンダー・アイデンティティーの違いがわかっていない人たちにとってあまりにもまぎらわしいのではないかと述べている。
while transgender model Isis King is wearing the shirts in advertisements, MAGNET member Ashley Love says it may be too confusing to those who don't understand the difference between sexual orientation and gender identity, since King is transgender but also heterosexual.
「本当に問題なのは、ある特定のモデルが『ゲイを法的に認めよ』Tシャツを宣伝して利益を得るかどうかではありません。既に大きく広まってしまっている、『トランスセクシュアル女性とは本当はドレスを着た“ゲイの”男性だ』という間違った概念を提供することで社会に送り込まれる混乱が問題なのです」とラヴは言う。「大衆はミスリードされて、『ゲイ』がトランスセクシュアリズムをも含む包括的用語だと考えてしまいます」
"The real issue isn’t if a particular model profits by promoting 'Legalize Gay' tees, it’s the confusion sent to society by feeding the already-widespread misconception that women of transsexual history are really 'gay' men in dresses," Love says. "The public is misled to perceive ‘gay’ as an umbrella term which includes transsexualism."
また、MAGNETの支持者でアクティヴィストのアンバー・グレイさんも、このTシャツは「トランスフォビアを終わらせて支持を得ようと奮闘している、今でさえ十分に代表されていないコミュニティーへの社会的誤解を招く」ものだとして批判しています。彼女によるとこの広告は、トランスセクシュアルやトランスジェンダーのニーズを消し去り、『ゲイを政治的に認める』利益を追求するものなのだそうです。
世間一般の、トランスとゲイとの混同は、たしかにまだまだひどいものがあると思います。トランス女性を「ドレスを着たゲイ男性」と決めつけるのは暴力だし、そうした大バカな誤解がなかなかなくならない現状には胸が痛みます。
……でも、このMAGNETの主張って、要するに「おまえら(同性愛者)なんかと一緒にされたくない」「ゲイの味方なんかしたら、こっちまでゲイだと思われる」ってことなんじゃね? あと、コミュニティーのためと称して、結果的に仲間のはずのトランスの職業選択の自由を無視しちゃってない?
だいたい、あの広告写真を見た人のいったい何パーセントが、「このモデルは『ドレスを着たゲイ男性』なのだ」と受け取るでしょう。「Tシャツを着たきれいな女性が写っている。こういう広告に出るってことは、ホモフォビックではないモデルさんなんだな」と考える人が大半なんじゃないでしょうか。
ちなみにアイシス・キングさん本人は以下のように語っています。
「このTシャツは、わたしという個人がゲイだと言っているのではありません。単にゲイであることはOKだと言っているだけです。それはつまり、ゲイの味方で公人であるわたしが、他の人たちにむかって、ゲイにはちっとも悪いところはないと告げているということです。わたしは間違った情報を受けているわけでもないし、自分の本質を見失ってもいません。このデザインは、ゲイコミュニティーにいるわたしの友人たちを力づけるもので、もっとたくさんのゲイの味方がこのTシャツを着ているところが見たいとわたしは思っています」
"The T-shirt doesn't say I am personally gay. This shirt simply says gay is O.K., meaning that I ― as an ally and a public figure ― am telling other people that there is nothing wrong with gay people. I'm not misinformed and I know who I am. This design empowers my friends in the gay community, and I'd like to see more allies wear this shirt."
さらにキングさんは、トランスジェンダーであることを公言しているモデルが全国的な宣伝に登場することの大切さを強調し、この広告によって「たくさんのトランスコミュニティーの人たちや十代の若者が、夢をかなえることはできるんだとわかる」と述べています。MAGNETよりキングさんの意見の方に共感するなあ、あたしは。