スタンガン空打ちでいじめっ子から身を守ろうとしたゲイ高校生、退学の危機に


米国の高校でゲイいじめにあっていた17歳の少年が、いじめっ子から身を守ろうとしてスタンガンの空打ちで威嚇したために、停学処分を受けました。退学になるおそれもあるそうです。
詳細は以下。

この少年ダレル・「ダイナスティ」・ヤング(Darnell "Dynasty" Young)君は17歳。米国インディアナポリスにあるアーセナル技術高校(Arsenal Tech High School)に通う、カミングアウト済みのゲイ少年です。彼は2011年にこの高校に転校してきて以来、頻繁にいじめられていたとのこと。具体的には瓶や石を投げつけられたり、バス停から家までついて歩いて「殴る」と脅されたり、学校のトイレで性行為を行ったという噂を流されたりしたのだそうです。ヤング君は一時、自殺まで考えたとのこと。

ヤング君のお母さんは学校当局に10回もいじめの報告をしたそうです。が、まともに調査がおこなわれたのは1回のみ。教師も管理者も、ヤング君がカミングアウト済みのゲイなのが悪いという態度だったとのこと。ちなみにラリー・ヤレル(Larry Yarrell)校長は、ヤング君がアクセサリーなどを「トーンダウン」するべきだとして、以下のように語っているそうです。


「子どもは子どもなのだから、もし女性の衣装を着ていれば何でも言いたいことを言うでしょう」ヤレルは語った。「人と違っていようとしたり、女性の服を着ることを選んだりすれば、そういうことは起こりうるのです。理想主義的な社会なら問題は起こらず、きっと誰でも着たい物を着られるのでしょうが」
"If you wear female apparel, then kids are kids and they're going to say whatever it is that they want to say," Yarrell said. "Because you want to be different and because you choose to wear female apparel, it may happen. In the idealistic society, it shouldn't matter. People should be able to wear what they want to wear."

何すか、この手垢のついた「いじめられる側が悪い」主義は。さらに「社会がそうなってるんだから仕方ないじゃん」(意訳)っていう責任回避には開いた口がふさがりません。「人が何を着ていようといじめは許されない」と教えるのが教育の仕事じゃないんですか。

学校がこんななので、ヤング君のお母さんは万一を考えて息子にスタンガンを持たせたのだそうです。ヤング君によると、2012年4月16日、6人の生徒がヤング君を取り囲み、ぶちのめすと言って脅すという事態が発生したとのこと。身を守るため、ヤング君はスタンガンを空中で放電させて威嚇。いじめっ子たちは引き下がったものの、ヤング君は数分後駆けつけた警備員に手錠をかけられてしまいました。彼は停学処分にされ、さらに除籍処分も検討されているそうです。

いじめっ子は直接的な暴力をふるっても見逃される一方で、いじめられっ子はスタンガンを空打ちしただけで停学(または除籍)って。黙って殴られてろとでも言うんでしょうか。

もちろん学校に武器を持っていくのはいいこととは言えません。さらに言うと、インディアナ州では18歳未満のスタンガン所持は違法(ヤング君のお母さんは『知らなかった』と述べています)なんだそうで、その意味でも誉められたことではありません。でも、元はと言えば生徒を守ろうともしなかった学校側がいちばん悪いでしょ。

なおこの一件の報道にあたり、Huffington Postは、今年4月19日にオハイオ州で起こったよく似た事件を挙げています。こちらは小学校での事件。背が低くて足首に装具をつけていることを理由にいじめられた10歳児童が、身を守ろうとしてBBガンを学校に持ち込み、校長が警察に通報したのだそうです。
結局こういう事件が起こるのは、いじめ被害者に落ち度があるためでも、ましてや「社会がそうなっているから」でもないのだと思います。「子どもたちが『大人は守ってくれない』というイヤな現実を悟ってしまったから」というのが最大の理由でしょう。自分も含めて、大人は逃げちゃかんと思います。