米ABCの女装シットコム『Work It』、2話で打ち切りに


米国ABCネットワークで放映していたシットコム『Work It』が、わずか2話で打ち切りになったそうです。これは異性愛者の男性ふたりが職探しのために女装するという内容のコメディーで、GLAADなどのLGBT団体からトランスジェンダー差別的だとして抗議されていたとのこと。

詳細は以下。

GLAADがこの番組の何を問題としたかはWhy ABC's New Sitcom Work It Hurts the Transgender Community | GLAADに詳しいです。以下、拙訳。


GLAADはパイロット版を視聴しました。この番組のパイロット版ははっきりとトランスジェンダーに焦点を当てたものではありませんが、トランスジェンダーの実情にくわしくない視聴者が家庭で視聴した場合、やはり番組とトランスジェンダーとを結びつけてしまうでしょう。『Work It』は、女性の外見に適合しようとする男性のイメージを笑うように観客に促し、さらに、ジェンダーアイデンティティーやジェンダー表現が出生時に割り当てられたものとは違っている人々への嘲笑をより安易にするものです。
GLAAD has seen the pilot and while the show’s pilot does not explicitly address transgender people, many home viewers unfamiliar with the realities of being transgender will still make the connection. Work It invites the audience to laugh at images of men trying to adopt a feminine appearance, thereby also making it easier to mock people whose gender identity and expression are different than the one they were assigned at birth.


こうした問題は、同番組の印刷広告ではさらに顕著なものとなっています。この広告では、男性のメインキャラクターふたりが女装姿で男性用トイレの小便器に向かって立っているところが描かれています。これはトランスジェンダーアイデンティティーは滑稽または人工的なものだという考えを不注意に助長するのみならず、アンチLGBTな活動家がトランスジェンダーを差別から保護することを拒否するときに頼ろうとするイメージでもあります。
These problems are even more pronounced in the show’s printed ad, which depicts the two main characters dressed as women while standing at men’s room urinals. Not only does it inadvertently further notions that transgender identities are humorous or artificial, but imagery like this is one of the first things anti-LGBT activists resort to when trying to deny transgender people protections against discrimination.

GLAADのサイトにはその印刷物の画像も載ってますが、見ると女装の男性キャラふたりがいかにもオトコオトコしたがに股で小便器に向かって立っており、もっとはっきり言うならば立ちションの最中だと思わせる写真になってます。これを見せられて「さあ面白いでしょ、笑って」と言われてもちょっと困るなあ、あたしは。

一方、ドラァグパフォーマーのル・ポールは、『Work It』はそこまで侮辱的(offensive)ではないと主張しているようです。詳しくは以下を。

以下、拙訳。


「誰もが、なんていうか、『なんてことだ。私は不快にさせられた!』って感じ。これはエゴに基づいた文化で、わたしたちはその中で生活しているんです。エゴはアイデンティティと大いに関係があります。で、ほら、ドラァグってアイデンティティーをからかって笑う(mock)でしょう。それで、実際には何の意味もないんです。思うんだけど、私の世界では、私の友達の輪の中では、何でもからかって笑うんです! からかって笑われないものなんてありません。何でも深刻に受け止めるのはやめなさい」
"Everybody's like, 'Oh my god, I'm offended!' It's an ego-based culture we live in. The ego has everything to do with identity. So, you know, drag actually mocks identity. So it doesn't really make any sense. I think, in my world, in my circle of friends, we mock everything! Everything is up to be mocked. Don't take anything seriously."

うーむ。あたしは『Work It』の実物を見ていないから何とも言いがたいものがあります。それにしても、なんでそこでル・ポールなんでしょうか。ル・ポール、ドラァグじゃん。畑違いじゃん。

なおWahington Postによると『Work It』はもともと視聴率は高くなかったようで、ニールセンは第2話を見たのは500万人以下だったと発表しているそうです。