石原慎太郎都知事って、アンドレイ・ペジックをご存知ないんですね(追記あり)
週刊ポストでの石原慎太郎発言に反論するよ
石原慎太郎都知事が、先日週刊ポスト2月25日号でこんな発言をしたそうで。
以下、それに対する反論です。
我欲を満たすための野放図な害毒は日本を駄目にする。必ずしも取り締まればいいわけではないが、諸外国では目にしないようなものが、メディアにもインターネットにも横行しているようでは、やはりおかしいといわざるを得ない。
差別でいうわけではないが、同性愛の男性が女装して、婦人用化粧品のコマーシャルに出てくるような社会は、キリスト教社会でもイスラム教社会でもあり得ない。日本だけがあってもいいという考え方はできない。
1. 男性が女装してコマーシャルに出るのは「日本だけ」?
都知事はオーストラリアの男性モデル、アンドレイ・ペジック(Andrej Pejic)をご存知ないんですね。
化粧品のコマーシャルに出てるかどうかは知りませんが、この人ジャン・ポール・ゴルチェのショウに花嫁姿で出てますよ。こんな感じで。
というわけで、男性が女装して女性用のものを宣伝するのが日本だけだなんて思ったら大間違いです。
2. 同性愛者がコマーシャルに出るのは「日本だけ」?
そもそも女装しているからといって、同性愛者とは限りません。性的指向は外見から判断できるものではありません。その点から言っても、都知事の発言はずいぶん杜撰です。それでもとにかく同性愛者をCMに出すなというのであれば、海外にはこんなゲイCMがありますよと申し上げておきます。
3. ひょっとしたらトランスと女装の区別がついてない?
ひょっとしたら、くだんの石原発言はトランス女性を「同性愛の男性の女装」と決めつけた上での偏見開陳かもしれません。でも、トランスジェンダー女性がメディアで活躍するのも、別に日本だけではありません。たとえばアメリカのリアリティ番組『アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル』出身のモデル、アイリス・キングは、テレビのみならず雑誌やファッション・ショウにも出ています。ジバンシーのスーパーモデル、リー・Tもトランスジェンダー女性です。
4 . 前都知事も女装してました
青島幸男前東京都知事はTVドラマ『いじわるばあさん』で思いっきり女装しまくってたんですが、それは「我欲を満たすための野放図な害毒」ではないのでしょうか。老婆の姿で笑いの対象となるのはOKで、きれいに女装して化粧品を売るのは駄目ということであれば、そこにもまた別種の差別が働いてるんじゃないですか。
5. それでもどうしても「諸外国」とやらの真似をしたいのなら
どうしてもどうしても「諸外国」とやらの真似がしたいのなら、こないだヒューマン・ライツ・ウォッチに勧告された、「差別的な法律を改正し、差別禁止の事由に性的指向を含める」という仕事に取り組んだらどうですか石原さん。EU基本権憲章は性的指向にもとづく差別を明確に禁止しており、よってEUに属する「諸外国」には同性愛差別を禁じる法律があります。別にEU諸国でなくても、国レベルでアンチゲイな差別を禁じる法律を持っているところはたくさんあります(参考:LGBT rights by country or territory - Wikipedia, the free encyclopedia)。日本にもそうした法のひとつも作ってはどうですか。
6. まとめ
※2011年2月22日追記
なんかものすごく誤読している人がいるようなので追記。アンドレイ・ペジックは性的指向を公表してませんよ(参考:Andrej Pejic – The Androgynous Super Model)。そして、本文中にも書いた通り、「性的指向は外見から判断できるものではありません」。あたしは、「男性として生まれた人が女装して女性用のものを宣伝する」例としてこの人を挙げたにすぎません。以上、念のため。