ホモフォビックないじめは健康に有害、カナダ研究

カナダのコンコルディア大学で行われた研究で、ホモフォビックな拒絶や攻撃を受けるとコルチゾールの分泌過多が起こるという結果が得られたそうです。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれるホルモンで、自殺率や記憶喪失、心血管疾患、骨密度の問題などを悪化させるものであることから、「これでホモフォビアは健康に有害であることが示された」と研究者は述べています。

詳細は以下。

この研究を行ったのは同大学の大学院生Michael Benibgui氏。研究の手法は、2003年から2004年にかけて、モントリオール在住の63名のレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル(18歳〜25歳)の唾液サンプルを採取し、アンケート調査を行うというもの。結果として、ホモフォビックないじめを受けている人はコルチゾールの分泌に問題があることが判明したのだそうです。

通常コルチゾールの分泌量には日内変動があり、朝がもっとも多く、夜がもっとも少なくなります。ところが、ホモフォビックないじめに遭っている人は一日中ずっとコルチゾールレベルが高いままだったとのこと。

調査対象となった63名はLGBグループのメンバーなのですが、グループ内でもコルチゾールレベルに有意の差があったそうです。これはカムアウトした人はより攻撃を受けやすいためではないかと説明されています。


「助けを求めれば性的指向がより人に知られてしまい」、言葉での攻撃や肉体的攻撃などを「受けやすくなる可能性がある」とBenibguiは指摘している。「これは両刃の剣なのだ」
"By seeking support, they might become more exposed and become more vulnerable" to verbal and physical attacks, Benibgui noted. "It's a double-edged sword."

Michael Benibgui氏は、ホモフォビックないじめと長期にわたる肉体的・心理的コンディションとの生物学的な関連について調べたのは氏が初めてであると述べているそうです。

なお先行研究では、同性愛者の自殺率は異性愛者の14倍だとされているとのこと。調べてみたら、これはおそらくBagley, C., and Tremblay P. (1997) Suicidal behaviors in homosexual and bisexual males.のことのようです。以下、該当部分をざっと訳してみます。


男性のうち10.9%の、同性愛者と分類される者(現在同性愛行為を行っている男性と、禁欲している同性愛者男性)にとって、生命にかかわる自殺未遂を起こすリスクの率は13.86 : 1である。すなわち、これらの男性たちは、人生のなんらかの時点で深刻な自殺未遂をする率が、異性愛者の対照群の14倍(82人中5人: 6.1%に対し、688人中3人: 0.44%)なのである。
For the 10.9 percent of males classified as homosexually oriented (currently homosexually active males, and celibate homosexual males), the risk ratio for a life-threatening suicide attempt was 13.86 : 1; that is, these males were almost fourteen times (5/82: 6.1% vs. 3/688: 0 .44%) more likely to have made a serious suicide attempt at some point in their lives than their heterosexually oriented counterparts.

念のためつけ加えておきますが、コルチゾールの分泌過多は別にホモフォビックないじめだけで引き起こされるわけではありません。何であれストレスによって視床下部が刺激され、脳下垂体前葉の興奮が起これば、副腎皮質刺激ホルモンが分泌されてコルチゾールの分泌が促進されます。それでもなお、ホモフォビックな拒絶や攻撃によって生物学レベルでどんな健康リスクが生じているかを説明できた功績は大きいかと。こうした研究がもっと進んでくれるといいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
cardiovascular 心臓血管の