隣人に脅迫され家を焼かれた米レズビアンカップル、訴訟を起こす


米テネシー州のレズビアンカップル、近隣住民から「殺す」と脅され家を焼かれる - みやきち日記の続報です。2010年9月に家を火事で失ったレズビアンカップルが、2011年2月1日、以前から2人を脅迫していた近隣住民をヘイトクライムで訴えたそうです。
詳細は以下。

このカップルは造園技師のCarol Ann Stutteさん(47)と看護師のLaura Stutteさん(48)。2人の家は昨年9月に火事で焼け落ち、母屋と離れたところにあった車庫には「変態ども("Queers")」と大書されていました。

前回の記事でも紹介した通り、Stutteさんたちはそれまでずっと近所の住民から嫌がらせや脅迫を受けていました。具体的には、こんな内容です。

  • 車回しに釘を撒かれる
  • ボートを牽引するトレーラーの大型ボルトをゆるめられる
  • ジョークと称して「死んだ変態("a dead queer")より良いものって何? 答えは『2人の死んだ変態』("two dead queers")」などと言われる
  • 家を焼く、殺すと脅迫される

wbir.comによると、2人が受けていた被害はそれだけではないようです。問題の住民たちはStutte家の犬たちに毒を盛ると脅しており、実際、この住民宅の裏庭に誘い込まれて肉を食べさせられた犬が、直後に1匹死んでいるそうです。また、この住民は2人に対し、いつでも殺せるとか、警察に友達がいるから捕まらないと言ったりもしていたとのことです。さらに、Stutte家の娘さん宛に宅配で届いたインスリンポンプ(1型糖尿病患者が持続的にインスリンを皮下に注入するために使う医療器具)をこの住民が受け取って、Stutteさんたちには返さなかったということもあったそうです。Stutte家には新しくポンプを買うだけの金銭的余裕がなかったため、インスリンポンプの交換ができなくなってしまったとのこと。
なお、この住民は勝手にStutte家の土地に入り込み、窓越しにじっと彼女たちを見ていたりもしたそうです。

Stutteさんたちは2010年8月に家を売ることを決めたのですが、それから1か月して、その家が全焼してしまいました。火事があったとき彼女たちは休暇中で、消防署からの知らせで初めて事件を知ったそうです。それから数日後、車も故意に破壊されていることが判明。くだんの隣人たちは、焼け跡を訪れたStutteさんたちを嘲笑したとのこと。

ちなみにStutte家がこの家に越してきたのは2005年のこと。警察の報告書は、このレズビアンカップルが何年も嫌がらせを受けていたことを裏付けてはいるものの、これまでのところ誰も逮捕されていないそうです。

Stutteさんたちは問題の住民を不法侵入と動産横領、故意に精神的苦痛を与えたこと、不当な嫌がらせなどで訴えているとのこと。

ちなみにwbir.comのこちらの記事によると、この事件、FBIがヘイトクライムとして捜査しているようです。

嫌がらせがあったことを警察が認めているのに、まだ容疑者が逮捕されていないっていうのは一体どういうことなんでしょうか。インスリンポンプの1件なんて、問題の住民が自分で「荷物を受け取った」とStutteさんにもUPS(ユナイテッドパーセルサービス、米国の大手宅配業者)にも言ってるんだそうですよ。それでいてStutteさんたちに渡さなかったのなら、これは立派な窃盗じゃないかと思うんですが。インスリンポンプって日本円で軽く数十万円する(参考:テルモ プレスリリース 2003)上に命にかかわるものなのに、それを盗ったと言いふらしても捕まらないって、どういうことよ。

あたしが無遠慮なホモフォビアの表出にノーを言うのは、「同性愛者なんて侮ってもいい存在」という価値観が維持強化され続けたら、こうした事件は絶対になくならないと思うからです。たとえ1万人のうち9999人までが直接的な排除行為には出ないとしても、残りの1人に家に火をつけられたらおしまいなんだよこっちは。早く犯人が捕まって、厳正な法の裁きを受けるよう祈ります。

単語・語句など

単語・語句 意味
conversion (動産の)横領
infliction (苦痛・打撃などを)与える[加える]こと、(負わされた)苦しみ、苦難、迷惑、厄介なもの
distress 苦痛、極度の疲労、悩みの種
malicious 《法》悪意[害意]のある、故意の、不当な