荒川弘さんの農家エッセイ漫画『百姓貴族(1)』(新書館)が面白い

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新書館 2009-12-11
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鋼の錬金術師』の荒川弘さんによる農家エッセイ漫画です。いやあ面白かった。北海道の農家出身の視点から語られる「農業」の力強さとオモシロさと切なさがすばらしい。真冬の十勝地方(気温マイナス10〜20℃)で湯上がりパンイチで牛舎を見に行っちゃう親父様も、朝から晩まで実習三昧な農業高校生も、メロンをくりぬいて中身全部食っちゃうエゾシマリスも、みんなみんなたくましすぎて拍手ものです。

こういうタフネスって、本当は生き物としては当たり前のことなんだろうなと思ったりしました。食料が欲しければ、本来これぐらい身体を張って動き回って当然なんですよね。そういうことを笑いに載せてさらりと語ってくれているところが、たいへんに面白かったです。また、農業をとりまくシビアな事情にもきちんと触れつつ、変に恫喝的にも説教臭くもなっていないところもよかった。笑いながらするする読めるのに、読んだ後でじっくり考えさせられるという、北風と太陽の太陽みたいな描き方だなあと思いました。
個別によかった箇所は数限りなくあるのですが、最もインパクトがあったのは台風の話。超強力な台風が北海道に上陸し、牧柵も牧草も数十トンもの堆肥もきれいさっぱり押し流されてなくなった後、


以来「大自然を守ろう」とかそういうフレーズには
あんなバカ強い物を“守ろう”なんて上からの物言いできねーよ!!
と思うようになった
ってところ(p. 71)。ものすげえ説得力。そんなバカ強い物と日夜戦いながら食糧供給してくださっている農家の皆さんありがとう。
ちなみにあたしはハガレン未読なのですが、んなこと関係なくめちゃくちゃ楽しめる本でした。すんごくおすすめ。