英国在住のマレーシア人既婚トランス女性、強制送還の危機に直面

マレーシア出身で、夫とともに英国で暮らしているトランス女性が、強制送還の危機に瀕しているというニュース。

この女性はFatine Youngさん(36)。17歳のときから女性として生活しています。2006年にクアラルンプールで現在の夫Ian Youngさん(30)と出会い、2009年12月、6ヶ月の観光ビザで英国に入国。内務省の許可を得て6月に結婚(The Malaysian Bar - Why Fatine can’t come homeでは、結婚ではなくシビル・パートナーシップ登録と報じられています)し、現在はダービー市でふたり一緒に暮らしています。

ところが、結婚(またはシビル・パートナーシップ登録)したにもかかわらず、英国はFatineさんの在留許可申請を2度却下。1度目はパスポート写真が不適切という理由で、2度目はビザの期限が切れていたという理由からだったとのこと。

この件でメディアの注目を広く集めてしまったため、母国に帰れば投獄されるのではないかとFatineさんは危惧しています。マレーシアでは同性愛は違法です(同国では、FatineさんとIanさんの関係は同性愛とみなされます)。また、マレーシアのイスラム教指導者は、もしもFatineさんが女性の服を着て帰国したり、マレーシア国内で結婚しようとしたりしたら罰を受けることになると言っているとのこと。

このカップルは既に3度目の申請を出しています。英国国境局は、Fatineさんが同国への居住を求めることは認めながらも、まず母国に帰ってから申し込まなければならないと述べているとのこと。しかし、単に一旦マレーシアに戻れば済むという話ではないんです。The Malaysian Bar - Why Fatine can’t come homeによると事態はもっと複雑で、

  1. 帰国時にFatineさんのパスポートが没収され、英国に戻って来られなくなる可能性がある。
  2. 夫のIan Youngさんがマレーシアに住むにしても、刑法の同性愛行為を禁じた条項に抵触するため、Ianさんまで起訴される可能性がある。(Fatineさんは性別適合手術を受けていない)
  3. Fatineさんが性別適合手術を受けたとしても、マレーシアでのIDを女性に変えることは許可されない。
  4. FatineさんとIanさんのシビル・パートナーシップは、マレーシアでは認められない。
  5. 仮にこのふたりが結婚したとしても、マレーシアの現行法では、外国人の夫にマレーシアで働く権利を自動的に認めてはくれない。
  6. このふたりが上記のすべてのハードルを乗りこえたとしても、社会からの差別と排除に直面することになる。

とのこと。
まさに八方塞がり。

母国での迫害を恐れて難民申請する性的少数者は少なくありませんが、その国の人間と結婚(またはシビル・パートナーシップ登録)していてさえ在留が認められないんだったら、これ以上何をどうすればいいんでしょうか。ましてや、これだけの困難の待ち受けている母国に一旦帰れとは、お役所仕事にもほどがあるのでは。暗澹たる思いです。

単語・語句など

単語・語句 意味
Home Office 内務省
UK Border Agency 英国国境局