カナダ連邦裁判所、レズビアン米脱走兵の難民申請却下を誤りとし、再審査を命じる

米軍を脱走したレズビアンの兵卒、カナダで難民認定を申請 - みやきち日記の続報です。カナダの移民難民委員会はこの兵士Bethany Smithさん(別名Skyler Jamesさん)の難民申請を却下していたのですが、このたびカナダ連邦裁判所がこの却下を誤りとし、移民難民委員会に申し立ての再審査を命じる判決を出したとのこと。

これまでのいきさつについては、2009年09月10日のAFPBB Newsの記事に詳しいです。以下、引用します。


この兵士は、米ケンタッキー(Kentucky)州フォートキャンベル(Fort Campbell)陸軍基地に配属されていたベタニー・スミス(Bethany Smith)上等兵(21)。ショッピングモールで女性と手をつないで歩いているところを別の兵士に目撃され、同性愛者であることを暴露されたと話しているという。
メディアが報じたスミスさんの談話によると、スミスさんは毎日のように嫌がらせを受け、宿舎の部屋のドアには「殺してやる」など100以上の脅し文句が落書きされた。上官に除隊を申し入れたが、アフガニスタンへの派兵を考えていた上官は聞き入れず、このためカナダへ脱走したという。
フォートキャンベル基地では1999年、同性愛者の兵士が殴り殺されるという事件が発生している。
カナダの移民政策当局はスミスさんの難民申請を却下したが、スミスさんは8日、連邦裁判所に上訴した。

Smithさんは今回、この上訴に勝利したわけです。

ちなみに移民難民委員会がSmithさんの難民申請を却下していた理由のひとつは、Smithさんは自分の立場を守るために十全の努力をせず、上官に助けを求めなかったというもの。しかしSmithさん本人は、上官たちはハラスメントや脅迫に加わっていると思ったと証言しているそうです。

これについて連邦裁判所のMontingy裁判官は、「軍の中では階級には絶対服従という独特の雰囲気があり、移民難民委員会はこの特別な文脈に敏感ではなかったようだ」と述べています。また、委員会がSmithさんの申請を1999年のフォートキャンベル基地での同性愛者殺害事件とは関連がないと位置づけたのも間違いであるとしています。

Smithさん側の弁護士Jamie Liew氏は、今回の判決を、移民難民委員会による次の聴聞に指示を与えるものだとし、


「明確な判決であり、新たな裁定者がこの件をより細かく調査してくれるのではないかという希望が持てます」
"It was a clear decision and it gives us hope that another adjudicator could look at this in a more nuanced way,"
と語っているとのこと。

今までのところ、これまで米軍脱走兵がカナダで難民認定されたケースはないのですが、そのほとんどが戦争反対を理由とする難民申請だったとのこと。SmithさんとLiew弁護士は、Smithさんの申請事由は性的指向による迫害であり、そこがこれまでのケースと違うと主張しているとのことです。ちなみにAFPBB Newsによると、「同性愛者の米兵がカナダに難民認定を求めるケースは今回が初めて」なんだそうで、そういう意味でも今後の展開が非常に気になります。無事難民認定されて、移民が認められるといいですね。

単語・語句など

単語・語句 意味
deserter 脱走兵
Federal Court 連邦裁判所
reassess 査定し直す、再評価する
Immigration and Refugee Board 移民難民委員会
err 間違いをする、あやまちを犯す
deport 〈外国人を〉国外に退去させる、追放する、強制送還する
adjudicate 裁定を下す、宣告する(通常、法的権限を有する者による判断について言う)
decision 判決