児童性虐待の冤罪で21年投獄されたゲイ男性、無罪に
米国で児童性虐待の冤罪で終身刑とされたゲイ男性が、21年間の服役ののちようやく無罪判決を勝ち取った、というニュース。
冤罪で投獄されていたのは、現在42歳のBernard Baranさん。Baranさんは1980年代早期に高校を中退し、マサチューセッツ州のブルーカラーの町にあるデイケアセンターで働いていました。カミングアウト済みのゲイだった彼は、デイケアに来ていた子供達に性的な行為をしたとして訴えられ、終身刑に処せられました。
実は子供達への聞き取り調査を録画したビデオテープには、彼が子供達に触ってはいないという証言が入っていました。が、検察官はテープのその部分を無視。Baranさんも弁護士も、そもそもそんな証言があること自体を知らなかったそうです。
Baranさんは2006年まで21年間服役。判事が有罪判決をくつがえして審理のやり直しを命じた際に、他の証拠物件の中にまぎれていたビデオテープが再び出てきて、ようやく中身が明るみに出たとのこと。
John Swomley上訴弁護士によると、ビデオテープ中のとある部分では6歳児が「ごほうびはどこ? ごほうびくれるって言ったじゃない! 今ごほうびをちょうだい!」と言い続け、別の部分では、子供達がBaranさんは1度も彼らの陰部に触っていないと言っていたそうです。いくつかの箇所では、子供達はBaranさんに触られたと述べていましたが、それも肯定的な返事をするまで何度も同じ質問を繰り返された後の発言であることがしばしばだったとSwomley氏は言っています。検察はそうした部分を編集したテープを証拠として見せていたのだ、というのがSwomley氏の意見です。
……元記事では明言されていませんが、これって要するにごほうびで釣ったり、誘導尋問したりしてたってことですよね。ひどい。
2009年6月9日、地区検事長はBaranさんに対する嫌疑を全て取り下げました*1。Baranさんは今、ボストンで庭師として働いているそうです。
ちなみに、そもそもこの一連の「性虐待事件」(とされていたもの)は、警察のチクリ屋をやっていたドラッグ中毒の夫婦が、警察筋のコネに「ホモがうちの息子を見るのは気に入らない」「息子のペニスに血がついていた」と言ったことに端を発したとのこと。Baranさんが逮捕され、顔写真が新聞に出回るようになると、ひとりまたひとりと「うちの子も性虐待された」と言い出す親が出てきて、最終的には5組の親がそう主張したんだそうです。
でもねー、今少しググってみただけで、
- ひとりの男児が喉に淋菌を持っていたことが証拠とされたが、Baranさんは淋病検査では陰性だった
- この子は複数の里親の元で育っており、養母のボーイフレンドに性虐待されたと言っている
- ひとりの少女の処女膜に1〜2mmの裂傷があることが証拠とされたが、そうした裂傷は性虐待をされていない少女の50〜60パーセントに存在する
- そもそもその子が自分で傷つけた可能性あり(自分で陰部に物を入れているところが目撃されている)
- Baranさんに不利な証言をした少女のひとりが、裁判の後、セラピストに「本当は虐待はなかった」と言っている。母親から、デイケアを訴えて多額の金をせしめるために嘘をつけと命じられていた、というのがその子の言い分
みたいな話がざくざく出てくる*2んですよねこの事件。それでも冤罪が晴れるまでに21年もかかったという事実にめまいがします。それもただの21年ではなく、「ゲイの小児性犯罪者」とみなされ、他の服役囚から殴られたり性的に暴行されたりしては他の刑務所に移される、という繰り返し(Baranさん談)の21年ですよ。ゲイ=チャイルドマレスターという決めつけの怖さを垣間見た思いです。