映画『お買いもの中毒な私!』感想

面白かったです。最初から最後まで色彩と音楽の力でぐいぐい押しまくる演出がいいなと思いました。色彩の方はレベッカの言う「買い物をすると世界が美しくなるの」の「美しく」をみごとに表現していたし、音楽はどの曲も歌詞が状況にあてはまりすぎていて大爆笑。うまいなー。笑いの取り方がかなり強引だったりするので人によって好き嫌いは分かれそうですが、あたしは好きです、この映画。コメディなのに、依存症からの回復に不可欠な「底つき」の場面をきちんと押さえているところもよかった。

もともと原作の大ファン(1巻がペーパーバックで出てすぐ読みました)なので、原作との違いが気にならないと言えば嘘になります。たとえば督促状の文言が日に日に変わっていく面白さは映画では味わえませんし、レベッカの文才についてもうまく表現し切れていないんじゃないかと。ありていに言って、映画の方のレベッカは下手をすると「嘘つきで何の取り柄もないのに、男によるひいきの引き倒しでのし上がっただけの女」にも見えてしまいかねない気がします。

ただ、原作の「文章ならではの面白さ」を映像で見せるのってすごく難しいし、これはこれでいいんじゃないかとも思うんですよね。映画の方は逆に、デレク・スミースについに追いつかれて血の気がひいたレベッカの顔とか(これも『色彩』ですよね)、あのマネキンを使った演出とか、映像でなければできない表現がたっぷりと盛り込んであるわけですし、そっちを心ゆくまで楽しんでおけばそれでよし、と思います。

あ、でも、どうしても納得できないところがひとつあった! それは、舞台がイギリスからアメリカに変えられてしまったこと。ここはやっぱりイギリスでやってほしかったです。レベッカが請求される金額がポンドじゃないなんて、ピンと来ません。そこだけはとても残念に思いました。