わかってないくせに何でもかんでも「腐女子」とレッテル貼るのはやめてほしい

2009年3月4日の中日新聞夕刊のコラム「大波小波」で、明らかに「腐女子」という語の意味がわからないまま変なレッテル貼りをしている記事を発見。
コラムの筆者は「猫オデオン」氏。当サイトでも先日レビューしたレズビアン小説『ある鰐の手記』(邱妙津、作品社)を紹介する、という趣旨の記事なんですが、最後の一文が明らかにおかしいんです。以下、引用(強調は引用者によります)。


作品社から最近、「台湾セクシュアル・マイノリティ文学」という叢書の刊行が始まった。第一回配本の邱妙津『ある鰐の手記』を読んだだけだが、レズビアンの女子大生の心の動揺と官能への恐れ、知的思索の数々が、実に初々しく、また真摯に描かれている。デュラスに影響を受けた作家らしく、あちこちに自己処罰に満ちた鋭い警句がある。
もうひとつ見落とせないのは、ほとんど東京と同じレベルにある台北のファッションと映画の文化だ。作者はパリ留学中に二十六歳で夭折してしまったが、ひょっとして台湾における「腐女子」第一号だったのかもしれない。 (猫オデオン)
意味がわかりません先生。レズビアンの女子大生だと「腐女子」だってことになるんですか。それとも、「ファッションと映画の文化」に関心があるとイコール「腐女子」なの? さもなきゃ、パリで若くして自殺すれば(邱妙津の死因は自殺です)みんな「腐女子」? そんな馬鹿な。

断っておきますが、『ある鰐の手記』にはやおいもBLもまったく出てきません。これは自伝的な小説だそうですが、主人公が腐萌えしてたなんて描写はひとかけらもありません。主人公の友人としてゲイやバイセクシュアルの男性キャラクタこそ登場しますが、それとこれとは違う話でしょう。なのになんで、「台湾における「腐女子」第一号」? 何このふざけたレッテル貼り。同性愛関連の話題なら、なんでもかんでも「腐女子」と決めつけておけば済むとでも思われてるんでしょうか。そんなの、レズビアンに対しても、腐女子に対しても失礼よ。
んで、これって、search-lightさんのこちらのハイクにも通じる話だと思うんですよ。


あと、やおいが好きな人とか女オタクとか痛い女ファンとかをを全部ひと括りで腐女子扱いされることについては、
あえて暴力的に言えば「さして興味がない(が同時に見下してもいる)ものは全部同じに見える・聞こえる」んだと思います。

そう、結局、「さして興味がない(が同時に見下してもいる)」から、聞きかじりの言葉を適当に使ってわかったつもりになってしまうってことじゃないでしょうかね、これ。そもそも、このコラムの今回の副題が「台湾の腐女子小説」であるところから見ても、「猫オデオン」氏にはレズビアン腐女子の区別さえついていないようですし。中日新聞はこないだのレズビアンのヨハンナ・シグルザルドッティル氏のアイスランド首相就任報道で株を上げたかと思ったんですが、これでプラマイゼロって感じですねー。