『踊るギムナジウム』(森奈津子、徳間書店)感想

踊るギムナジウム踊るギムナジウム
森 奈津子

徳間書店 2006-12
売り上げランキング : 143486

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ゲイ・コメディ短編集。あとがきで森奈津子自身が「官能描写や感動的展開が期待されがちな同性愛物ですが、コメディとしても楽しんでもらいたい」と書いている通り、徹頭徹尾ギャグに徹した小説集となっています。パンチのきいた笑いという点では『西城秀樹のおかげです』(感想はこちら)の方がやや上かな、という気もしますが、同性愛というジャンルでこれだけ小気味良くギャグの連打を浴びせてもらえると、当事者としてはすごくほっとしますね。そうなのよ、やたらと深刻ぶるだけが同性愛物じゃないのよっ!

良かったところ

まず、なんと言っても表題作「踊るギムナジウム」の無茶苦茶さがすばらしいです。「時は未来、ドイツ系の美少年たちが学ぶギムナジウム惑星<青薔薇>(ブラウエ・ローゼ)には、『突然、音楽に合わせておのれの本音を高らかに歌いあげながら踊り出す』という、<ミュージカル行動>の習慣があった」というとんでもない設定のお話なんですが、これは

というふたつのステレオタイプを強引にリミックスしてしまうという力技なんじゃないかと思いました。映画で言うと『アナザー・カントリー』に、突如として『プロデューサーズ』の"Keep It Gay"のノリが混入する感じ、という言い方で伝わるでしょうか? ぜひ、ドイツ系美少年の俳優を使って大真面目に実写化してほしいものです。
他の収録作も、異性愛者の偏見ばかりか同性愛者/両性愛者側のおかしな点をも容赦なく笑い飛ばしてくれていて、痛快でした。ゲイ小説集だけあって百合要素はひとつもないんですが、そんなことはこの際どうでもいいです。バカバカしい(誉め言葉)小説を読んで笑いたい方におすすめ。