『パニックの手』(ジョナサン・キャロル、浅羽莢子訳、創元推理文庫)感想
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「何か起こっても、起こらなくても、最後でぞくりとさせられる」というダークでひねりのきいた作風は相変わらず。キャロル作品の毒は、まるで上等のチョコレートケーキに仕込まれたオレンジピールみたいに苦くて甘くてスパイシーだと思います。
前回『黒いカクテル』の感想を書いたときにはあたしはこの作家をアイリッシュやダールやユアグローになぞらえましたが、この『パニックの手』だとそれに加えてブラッドベリのテイストも入ってる感じ。おそろしいのは、キャロルはこれらのどの作家にも負けていないってことです。それどころか、すべての作品において、地上の他のどの作家にも真似できないような「キャロル節」を火花のごとく撒き散らしてますよこの人。まいった。メロメロ。こんな小説家見たことない。