別に「人間として」以外で愛してたっていいじゃん

「リベラルなつもりで実はホモフォビックな漫画表現について」というエントリで、同性愛に対していちいち「『人間として』愛してるんだから構わない」みたいな言い訳をくっつけたがるのは同性愛嫌悪的だ、ってな話をしました。その続き。

1. 「人間として」でなくたっていいじゃん

よく考えたら、ヘテロな関係であれ非ヘテロな関係であれ、当事者全員が幸せでさえあれば、別に「人間として」愛する必要すらないんじゃないかって気がしてきました。

以下、『まんぷく劇場』(室井滋文藝春秋社)より、山奥の露天風呂へ向かう道で「ヤギと交わってしまった」男性(Sさん)の話。


Sさんはことが終わった後、それはそれは後悔した。
だから、ヤギのことを早く忘れてしまいたいがため、露天風呂にもそれ以降ピタリ行かなくなった。
が、しかし、ふた月程過ぎて、それでもどうしても気になって川の方へ降りてゆくと、例のヤギがSさんの姿を見つけるなり、せきを切ったように駆けてきたのだそうだ。
そして、その瞬間、ヤギはSさんにとって、もうただのヤギじゃあないのだと、Sさんは思い知らされてしまったのだった。
「メエェ〜と鳴くとよぉ、せつなそうに鼻先をくっつけて、大粒の涙を流したんだよ。俺も思わずもらい泣きしちまって……なんだかいとおしくなってよぉ……」
Sさんの話はいつもこのセリフで終わったが、この話を聞くたび、私たちもなんとも奇妙な、それでいて、せつない気分になったものだった。
世の中、人それぞれ、人生色々ではあるか、羊やヤギの女心をつかめる人もいるのだから、話は聞いてみるものだ……と思う。

Sさんもヤギも幸せなら、「ヤギとして」愛してたって別にいいんじゃないかと思います。
というわけで、やっぱり、「人間として」という言葉を振りかざして愛のかたちを正当化しようとするのって変よね。法にふれてなくて当事者がみんな幸せならどんな風に愛してたっていいじゃん、というお話でございました。

2. おまけ

こういうことを言うと、「この女、ホモだのレズだのを擁護するのみならず、獣姦までもか! 日本はもう終わりだ!」と嘆くお子ちゃまが出てきそうなので、そういう人に対する今東光大僧正のお言葉も載せておきましょう。ちなみにこれは、1970年代、「週刊プレイボーイ」の人生相談コーナー「極道辻説法」に寄せられた相談とそれに対する和尚の回答です。



私は性に対して日頃思うことがある。それはホモとかレズとか、サド、マゾ、それにアニマルセックスといった風に、人間の性欲はエスカレートする一方だ。そしてそういった性が浸透する現実に憂いを感じるのだ。いまは、”異常”とされているものが日常茶飯事になるくらい普及し、それが”正常”だと思われる時代がこないとも限らない。かくほど人間というものが性に対して無限の欲求をいだいていいものだろうか? 人間は欲望を道徳的に抑えるところに人間らしさがあるのではないかと思うのだ。
(東京都荒川区町屋 23歳 早池峰惰若)
そんなに性を抑制したいんだったら、てめえは自分のを抑えてたらいいじゃねえか!? 人が助平だから、あの助平やめさせてもらいたいって言うのと同じでな。なんで人のことばかり心配してんのや、このあほんだら!
同性愛だとか獣姦だとかいろいろ言うけど、あんなの現代に始まったことじゃねえんだ。大昔なんかもっと自由奔放でな、獣姦なんざ屁とも思わなかった。オレが若い時に知り合った牧童なんか、やりたくなると雌山羊をつかまえて、チョンチョンをマスの代りにやってるんだ。
(引用者略)
だから、近代は性がエスカレートして、アニマルセックスになったと思ったらとんだ大間違いでね。(引用者略)人間はアダムとイブの時代から、ちっとも変わってやしないさ。それをてめえは、まるで救世主みたいに、人類をみんなサカリのついた犬みたいに見て、人類の性がどんどんエスカレートしていって滅亡するんじゃないかって悩んでいやがる。てめえの方がよっぽど頭、おかしいぜ。まったく暇なんだね、おめえも。

3. 参考文献

まんぷく劇場
まんぷく劇場室井 滋

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starsなんで?というくらいおもしろい出会いや事件に遭遇している室井さん・・・。お奨め!
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毒舌 身の上相談
毒舌 身の上相談今 東光

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