糸井さん、かつて書いてたことと矛盾してない? - MOTHER3 クリア後の感想(激しくネタバレ)

MOTHER3
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ようやくクリアしました。全体としては面白かったのですが、8章(最終章)に不満があるので、そこに絞った感想を書いておきます。
■以下、激しくネタバレです。■

8章のバランスが悪くて、エンディングの感動が薄い

リダの長台詞だけで「せかい」とノーウェア島の秘密を強引に説明してしまう割には、エンディングはプレイヤーに丸投げで「想像してください」というスタイルなのが納得いきません。「説明したいのか、したくないのか、どっちだ!?」とあたしは思いました。エンディングに想像の余地をたくさん残して物語をふくらませたいのなら、その前にプレイヤーの想像力に冷や水をぶっかけるような説明台詞(しかもあの長台詞!!)を延々読ませるべきではないでしょう。しかも8章での冒険は「下水道でボニーを探す(そして、リダに会う)」と「エンパイアポーキービルに昇る(そして、ラスボスと戦う)」のふたつだけなので、「逐一説明」と「自由に想像」の間に距離が無さ過ぎて、とてもやりづらかったです。

かつて糸井さんが、コピーとゲームの作り方に関して書いていたこと

以下は、『85点の言葉 - 知的で口べたなあなたに』糸井重里、NESCO)p127からの引用です。

おいしい生活」を「美味しい生活」にしたら、どうでしょう? 「おいしい」という言葉が持っている、ものすごく大きなイメージのカサが、きゅっと小さくなってしまいます。「くうねるあそぶ」にしても、これを「食う、寝る、遊ぶ」にしたら、これはダメなのです。すべてをひらがなにして、句読点を取ることが、私のこのコピーにおいてのテクニックだったのです。受け手はおそらく、その時間は一秒もないとは思うのですが、一読して意味がとれない。しかし、一秒後にはかならずその「くうねるあそぶ」という言葉の持つイメージの像をむすんでくれるのです。しかもそのとき、受け手には「オレはわかった」という快感があります。自分を物語化できるのです。自分がわかったとたん、自分のまわりに「ひょっとしたらわからないバカ」がどっと登場します。
ゲームをつくるのとコピーをつくるのはかなり似ているのです。「オレにしかわからなかったと思える、だれにでもわかる謎」をたくさんつくれば、受け手は興味を持ってそのメッセージをうけとってくれるのです。
これは非常に納得のいく考え方です。けれども、『MOTHER3』の8章ではそれが実現されているとは言いがたい。リダがペラペラ喋る説明台詞は完全に「一読して意味がとれ」るもので、ゲーム世界のイメージを「きゅっと小さく」固定してしまっています。そこには「オレはわかった」という快感など微塵もなく、あたしなんかはむしろ「自分で謎を解いたり想像したりする楽しみが一方的に潰されてしまった」と悲しくすら思いました。その後で、今さらあのようなエンディングで「さあ、自由にイメージの像を結んでくださいね」とばかりに放り出されても、一度閉じてしまった「ものすごく大きなイメージのカサ」はそう簡単には開いてくれませんよ。
エンディングまでに、もっとヨクバ(=ロクリア)やマジプシーたち、それにアンドーナッツ博士あたりをうまく使って、少しずつ「こういうことかな?」と考えさせてくれたらよかったのになあ。

12章を8章に縮めたせいなのか?

MOTHER3』は、64版として開発されていたときは全12章あったそうです。ひょっとしたら、それを8章に縮めたために、8章にしわ寄せを押し付けるかたちになったのかもしれません。でも、12皿のコース料理を計画していたシェフが、「結局8皿になっちゃったから、最後のひと皿は焦げてます」つったって許されないよねえ。2周3周してやり込んでみればまたイメージは変わるのかもしれませんが、1度だけクリアした今は、ただ残念に思っています。