尾辻かな子氏の新聞記事を読んで思ったこと

中日新聞(2005年12月16日分)の、レズビアンの議員尾辻かな子氏の特集記事を見て思ったことが二つ。

カミングアウトマンセーな人じゃなくてよかった

記事の見出しが「同性愛の公表は社会変える一歩」だったので、読む前に少し警戒したのよ。ドキュメンタリー映画の中のハーヴェイ・ミルクレビュー)みたく「すべての同性愛者がカムアウトすれば差別はなくなる」的なおめでたいことを言ってるんじゃないだろうなこの議員、と。
可視化するだけで差別がなくなるのなら、黒人差別も女性差別もとうの昔になくなってるはずです。あと、人数が多いとわかれば自動的に差別されなくなるなんてこともありえません。南アフリカじゃ、人口の2割にも満たない白人が、人口の8割を越える非白人を踏みにじって生活してたんだし。ゲイレヅだってやっぱり、「姿が見えないから」「少数だから」というだけの理由で差別されているわけでは、ない。誰でもかれでもカミングアウトさせりゃいいってもんじゃない。
それに、そもそも職場とかでいちいちカミングアウトなんかしたら、ものすごいエネルギー使って不当解雇と戦わなきゃいけないでしょ。やってられないよ。明日のゴハンのためにカミングアウトは控える、という選択肢も当然あるはずだと思うのよ。
でも記事の中で尾辻氏がはっきりと「すべての人が(カミングアウトを)すべきだとも思わない」と言っていたので、そこはちょっと安心しました。記事の見出しは、記者が少ない字数内でテケトーにつけただけみたい。もしも能天気に「みんな出ておいでよ!」的なことを呼びかけてるんだったら絶対この人には投票しねーぞ、それどころか政敵にガンガン投票してやるぜー、とまで思ってたんだけど、そういう風じゃなくてよかったわ。

目からうろこだったこと

以下、ちょっと目からうろこだった部分を引用。

同性のパートナーが一緒に生活をともにしていても、「家族じゃない」という理由で、病院から個人情報を提供してもらえないケースがある。だから、万が一の被災時などに安否の確認が不安ではないかと、府議会で問題点を指摘しました。
同性カップルだと、パートナーの危篤時に「家族じゃないから」とICUに入れられてもらえないってことは気づいてて、「いざというときは他の親族が来なさそうな時間帯に、『いとこです』とか大嘘ついて入ろう」とか思ってたんだけど、ことはICUだけじゃなかったのねー。災害時に安否の確認ができないのは困る。それに災害時じゃなくても、「家族じゃないから」とムンテラが受けられないのも困る。これは気づいてなかったわ。
別に偏見はあってもいい(ほんとはよくないけど、結局完全にはなくならないと思う)けど、生死がかかってる局面での不都合はやっぱり困ります。システムの改変で不便をなくしてほしいと思います。虐待バカップルや家庭内別居夫婦ですら「家族」枠に入れてもらえるのに、うちらは何十年連れ添っても「アンタら他人だから」と蹴り出されるシステムってのは、やっぱり納得いかないよなー。
記事をさらに読み進めたら、大阪の公団住宅で、都道府県では初めて同性同士の入居ができるようになったのは、尾辻氏の提案がきっかけなのね。こういう風にシステム面から改革していくっていうのはやっぱり政治の力が必要なので、尾辻氏の今後に注目したいと思ってます。レズビアンだっていうだけで即信頼できるとか応援したいとか、そういう風には思わないんだけど(それは、ノンケさんがノンケ議員なら誰彼かまわず即応援するわけではないのと一緒)、じじい議員たちでは気づかないようなことを少しでも提案していってくれたらいいなー。