『放浪息子(12)』(志村貴子、エンターブレイン)感想

放浪息子 12 (ビームコミックス)

放浪息子 12 (ビームコミックス)

いつの間にやら全員高校生に。にとりん胆力あるなあ

女の子になりたい男の子・二鳥修一くんの物語、第12巻。レビュー書きをまるまる3年休んでる間に、いつの間にやら(12巻発売は2011年です)メインキャラが全員高校生になっていてびっくり。

相変わらずかわいい二鳥くんだけど、骨格も顔つきもずいぶん成長しているのが見てとれます。ただしお話は思ったほどシビアな方向に行かず、むしろ二鳥くんの度胸と行動力がクローズアップされていきます。そうなんだよ、ここでお涙頂戴にしないのが『放浪息子』のいいところなんだよ。アルバイトのエピソードなど、ジェンダー表現にまつわる困難もしっかり出てくるんだけど、そこで別のドアをちゃんと開けてみせるんだよねこの漫画は。ユキさんという、いわば別のドアを通って大人になったロールモデルもしっかり登場してるしね。

あと、すごくいいなと思ったのが、ファッションショーでの二鳥くんと高槻さんの出し物のテーマ名。あれってダブルミーニングですよね。二鳥くん視点でも高槻さん視点でも同じフレーズで同じように意味が通じるという。そのあたりがより「親友」っぽくて楽しかったです。「男女の間に友情は成立するか」なんていう糞くだらない(本っ当にくだらないわ、レズビアンから見ると)論争を軽やかに越えたところにふたりはいて、そこがかわいらしくもかっこよかったです。