米国カリフォルニア州で18歳未満への「ゲイ治療」禁止の動き


米国カリフォルニア州上院で、18歳未満へのEx-gayセラピー(同性愛を『治す』という触れ込みの、多くは宗教的なセラピー)を違法とする法案が提出されたそうです。
詳細は以下。

この法案は、「18歳未満の人の性的指向を変えようとすることは禁止」「18歳以上であっても、性的指向を変える療法を受けるには、インフォームド・コンセントの書き込み用紙にサインをしなければならない」とするもの。

インフォームド・コンセントの用紙には、以下のように書かれているそうです。


レズビアン、ゲイ、またはバイセクシュアルの性的指向を持つことは精神障害ではありません。いかなる種類の療法も、人間の性的指向を変える効果があるという科学的な根拠はありません。性的指向を変えようとする試みは有害となることがあります。抑うつ、不安、自己破壊的行動その他を引き起こすおそれがあります。
性的指向を変えようとする試みに反対する医学団体・精神保健団体には、米国医師会、アメリカ心理学会、アメリカ精神医学会、全米ソーシャル・ワーカー協会、アメリカカウンセリング学会、アメリカ小児科学会、アメリカ結婚・家族セラピスト協会が含まれます。
Having a lesbian, gay, or bisexual sexual orientation is not a mental disorder. There is no scientific evidence that any types of therapies are effective in changing a person’s sexual orientation. Sexual orientation change efforts can be harmful. The risks include, but are not limited to, depression, anxiety, and self-destructive behavior.
Medical and mental health associations that oppose the use of sexual orientation change efforts include the American Medical Association, the American Psychological Association, the American Psychiatric Association, the National Association of Social Workers, the American Counseling Association, the American Academy of Pediatrics, and the American Association for Marriage and Family Therapy.

これはいい落としどころなんじゃないかとあたしは思います。心情的には全面禁止にしてほしいところですが、「有害だからお上が全部禁止していい」ということだと、人間の愚行権の全否定になってしまいますから、それはよくないと思うんですね。

たとえばの話、お酒の飲み過ぎは有害ですよね。健康にも害があり、生産性も落ちるということで、日本の厚生労働省は1日当たり平均純アルコールで約60g(つまりビールなら約1.5リットル)を越えるお酒を飲む人の数を減らすことを目標にしています*1。でも、だからと言って、「1日に1.5リットルを越えるビールを飲んだら違法」という法律をつくり、晩酌の場に踏み込んで「貴様スーパードライのロング缶を4本飲んだな!」と逮捕するなんてことにしちゃったら、それはやりすぎなわけですよ。人には身体に悪いと分かっていても泥酔したり二日酔いになったり、そのせいで職場をクビになったりする権利があるからです。ただし、だからと言って子どもに酒を飲ませちゃいけない。愚行権が認められるのは責任をもった判断能力のある大人だけだし、大人が子どもに酒を飲ませるのは他者危害行為だからです。

カリフォルニア州成人年齢は18歳。そんなわけで、これはつまり、「あなたが成人で、リスクも承知の上でEx-gayセラピーを受けるなら止めはしませんよ」という法案なわけですね。なかなか合理的なんじゃないでしょうか。もちろん宗教団体は大反対するでしょうが、通ってほしいですこの法案。

*1:健康日本21参照。