レズビアンのシェフ、彼女の同性愛を祈りで「治療」しようとした上司から損害賠償160万ドルを勝ち取る


ニューヨークで働くレズビアンのシェフが、職場の集まりで彼女の性的指向を「祈りで治す」としておおっぴらに祈っていた上司を訴え、計160万ドル(約1億3千万円)の損害賠償を勝ち取ったそうです。

詳細は以下。

このシェフはMirella Salemiさんといい、マンハッタンにあるテキサス風メキシコ料理店「メアリー・アンズ」で働いていたのだそうです。問題は、店のオーナーだったEdward Globokar氏が従業員を集めて祈りの会を開き、そこでSalemiさんの同性愛を治すと称して祈っていたこと。6年働いたのち、Salemiさんは2007年にこの店を辞めました。以下、Salemiさんの弁護士の主張です。


「彼は彼女の心をおびやかしたのみならず、彼女の生計をもおびやかしたのです」Salemiの弁護士デレク・スミスは語った。「彼は彼女のセクシュアリティが祈りで治るかもしれないと考えていましたが、彼女は救済など必要としていませんでした」
"He not only threatened her soul, but he also threatened her livelihood," Derek Smith, a lawyer for Salemi, told the Post. "He thought praying might cure her of her sexuality, but she is someone who didn’t need to be saved."

陪審員団はGlobokar氏とこの料理店に対し、懲罰的損害賠償金*1として120万ドル、そして現実に生じた損害額相当の賠償金として40万ドルの計160万ドルをSalemiさんに支払うよう命じたとのこと。

「祈られたぐらいで何を大騒ぎしてるんだ」「上司に悪気はないだろ」とお思いの方は、以下のように考えてみては。白人上司のもとで働く日本人部下が、職場のミーティングでいちいち「黄色くてサルみたいで足も短くてかわいそう。祈りの力で早く『治って』、白人になれますように」と祈られたらどう思う? あるいは、「一重まぶたが『治って』二重になれますように」「オタクが『治って』アニメを見なくなりますように」なんて6年間同僚の前で言われ続けて嬉しい人っている?

大きなお世話なんですよ、こういうの。人を勝手に「病気の人」「救いが必要なかわいそうな人」と決めつけ、自分だけ高みに立って救済者様ごっこを始めるというのは失礼です。しかも職場の上司が部下相手にそれをやるというのは、立場を悪用したハラスメントにもなりかねません。

Lez Get RealによるとこのGlobokar氏はかつて「メアリー・アンズ」チェーンの6店舗すべてを所有していたものの、自分とちがう宗教的信念を持つ従業員たちに「地獄に堕ちるぞ」と言い続けたため絶えず告訴されていたそうです。こうした神様きどりのふるまいのあげく、多額の賠償金を支払うはめになったGlobokar氏ですが、そんなに宗教大好きなら聖書ぐらいちゃんと読んでおけばよかったのに。「人をさばくな。自分がさばかれないためである」とちゃんと書いてありますから。

*1:punitive damages, 不法行為の加害者の悪性が特に強い場合に認められる損害賠償(ランダムハウス英和大辞典第2版より)。