chun_tanakaさん(HN『ちゅん』さん)と和解に達しました。

1. chun_tanakaさん(HN『ちゅん』さん)と和解に達しました。

2010年4月21日のエントリ「同性愛が不自然だと言っているのは、生物学ではない。あなたでしょう? - みやきち日記」と、その後http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20100426/p1で書いた関連記事(削除済)について、補足を少し。

2010年5月1日、chun_tanakaさんことHN「ちゅん」さんよりメールをいただき、その後何通かのメールのやりとりを経て無事和解に達しました。和解にあたり、以下の4点で双方合意したことをここに明記しておきます。

  1. 和解に至ったことを「みやきち日記」上にて発表(このエントリ)
  2. ちゅんさんからみやきちへのメールを「みやきち日記」に掲載する(このエントリ)
  3. 「同性愛が不自然だと言っているのは、生物学ではない。あなたでしょう? - みやきち日記」は削除しない
  4. http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20100426/p1は削除する

以下、簡単な経緯説明に、ちゅんさんからみやきちへの最初のメールと、それに対するみやきちの返信を添えて、「これこれこんなわけで完全に和解済ですよ」と世に宣言しておくことにします。

2. ここまでの経緯

2010年4月18日
Togetter - まとめ「ピクシブ腐問題を受けてナマモノ腐者からのひとりごと」にchun_tanakaさん(『ちゅん』さん)のツイートが掲載される
2010年4月21日
みやきち、「同性愛が不自然だと言っているのは、生物学ではない。あなたでしょう? - みやきち日記」にてツイートの内容を批判
2010年4月21日
ちゅんさん、twitterのIDを変えて「野次馬」に「悪意あるコメントとともに晒された」ので「逃げた」とツイート
2010年4月26日
みやきち、新IDでのツイートをキャプチャし、http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20100426/p1(削除済)にて再批判
2010年5月1日
ちゅんさんよりみやきちにメール→和解に至る

3. ちゅんさんからみやきちへのメール(2010年5月1日)

※メールの転載はちゅんさんご本人のご希望によるものです。


みやきち様


はじめまして。
ちゅんと申します。
先日の「同性愛について」のtogetterでのコメントについての日記を拝見いたしました。
私の言葉が足りずご不快な思いをさせてしまったのだという事を思い、メールを差し上げます。

あの書き込みにおいて私は「マジョリティ側から見て」という一文を書き添えるべきだったと痛感致しました。
決して私が「同性愛が異常」と差別しているというわけではないのです。
いえ、ある意味差別しているのかもしれません…私自身、己が性別を認知出来ない事、異性に恐怖を感じる事、同性に対して恋愛感情を抱くことについてとても悩み苦しみ、周囲の目を恐れて生きているのですから。
私自身が、「差別を受けている」という意識を毎日感じ、怯えて生きています。だからこそ、必死になって「世間一般から見たら異常者扱いされてしまう性癖なのだから、本来そうではない人をそうであるかのように描いていたずらに嫌悪感を抱かせる事が、さらなる差別につながるのではないか」という書き方をしてしまいました。

そのことが、あなた様の心情を多大に害したのである事を理解し、謝罪したいのです。

また、私がその後twitterのアカウントを変更し「逃げた」と公言したという事もご不快だったろうと思います。
ですが、私にとって己がセクシャルマイノリティである事を明らかにした上での発言は、とてつもなく勇気のいる行為だったのです。
それを、オブラートに包まないお言葉で反駁されたという事に、強烈な恐怖感を感じてしまい、目を逸らす事で自分の心を守ろうとしてしまいました。
自分の心を落ち着けるためにまるであなた様の事を悪者のように書き、軽い言葉でごまかそうとした事は私の罪なのでしょう。

本当に、申し訳ありませんでした。

私自身、己がマイノリティであるという事実が周囲からどのような目で見られるのかと、とても恐ろしく思いながら生きています。あなた様のように誇りを持って立ち向かえるほどの勇気や、理解を得られるほどの説得力もありません。
私は、同じハンドルネームで、企業様との連携をとりイラストレーションを制作したり、シナリオを制作したりしています。
また、私のサイトを知っている家族や友人、リンク先のサイトの管理人様がたは、私がセクシャルマイノリティである事を知りません。
なので、今回の件で私のハンドルネームやサイトを明記した上でお言葉をいただき、検索サイトでの検索結果にみやきち様のあの日記が表示される事に、命が縮むほどの恐怖感を味わっています。
twitterの画面のキャプチャにも、私の友人たちのアイコンやIDが同時に写っているようなので、私の言動が元で、私の友人たちまでもが奇異の目や攻撃の対象になってしまうのではないかと、とても怖くて悲しくてたまりません。
ご不快を味わわせてしまった上にこのような事をお願いするのは本当に無礼な事かと思いますが、どうか、該当の日記を削除していただく事は出来ないでしょうか。

どうやったら、お詫び出来るのかわかりません。
ですが、無関係な友人たちや家族までもを巻き込むのはとても耐えられないのです。
本当に、我侭を申し上げているというのは存じておりますが、どうか、伏してお願いいたします。

長々と自分勝手な弁明を致しました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
どうか、御寛恕をいただけます事を、心より祈っております。


ちゅん

4. みやきちからちゅんさんへの返信(2010年5月1日)


ちゅん様


真摯なメールをありがとうございました。
今回の件では、当方も感情的になってしまい、至らぬところが多々あったと思います。この返信メールを送信し次第、当方の4月26日の該当記事(http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20100426/p1)は削除させていただきます。(画面キャプチャは既に消しました)
ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。

>あの書き込みにおいて私は「マジョリティ側から見て」という
>一文を書き添えるべきだったと痛感致しました。

ああ、それなら超納得でしたのに!

私が今回「生物学的に不自然」「生理的嫌悪感」という言い回しにあれだけ強く反応したのは、まさしくマジョリティ側がこれらの言葉を持ち出して同性愛者を殺し続けているからです。

ご存知かとは思いますが、たとえばウガンダやイランの法律では同性愛は違法で、毎年多くの同性愛者が拷問されたり殺されたりしています↓。

http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20091209/p2
http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20091111/p2

英語メディアを見ているかぎり、こうした刑罰の根拠として常に持ち出されるのが、同性愛は"unnatural practice"(不自然な行為)であるというロジックです。インドなどでも同様の言い回しで同性愛行為を断罪していますし、アメリカでさえ、ついこの間まで"crime against nature" (自然に反する法)で同性愛者を弾圧していたのはよく知られるところです。
なので、どうしてもこうした表現を見ると、殺された(そして現在も危機にさらされている)ゲイやレズビアンたちのことが頭をよぎって、とても辛いんですよ。自分もこうした国に足を踏み入れれば殺されかねないひとりであるだけに、余計に。

「嫌悪感」については、ゲイだといじめられて自殺したアメリカの小学生ジャヒーム・ハレラ君(http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20090423/1240446754)のことを思い出さずにはいられません。
自殺したとき、ジャヒーム君はわずか11歳。学校職員にいじめの事実を訴えても何もしてもらえなかった彼は、ある日自宅で延長コードで首を吊りました。死体を発見したのは10歳の妹だったそうです。
この少年の墓の前に立って、「ゲイは生理的に嫌悪感を抱かれて当然」と言うことは、私には口が裂けてもできません。ホモフォビアは後天的に刷り込まれるものであり、(文化圏が違えば同性愛が問題視されないことは、ちゅん様もご存知かと思います)、それを「生理的」なものとして片付けるような世の中であってはならないと思うんです。

私が一連のエントリで悲しみ怒ったのは、こうしてマジョリティに命を奪われ続けている同性愛者たちのことが一瞬で頭をよぎってしまったからです。そのために必要以上に怒気をあらわにしたエントリになってしまった、と反省しています。重ね重ね、申し訳ありませんでした。

それから、私は勇気のないヘタレですし、説得力も皆無だと思いますよ。自分自身が差別が恐くて仕方がなく、殺されるのも嫌だからこそ、ネットでくどくどと駄文を書き続けているのだと思います。なので、ちゅん様のメールの、

>私自身、己が性別を認知出来ない事、異性に恐怖を感じる事、同性に対して
>恋愛感情を抱くことについてとても悩み苦しみ、周囲の目を恐れて生きている

というくだりは他人事ではないと感じました。私自身が実生活ではほぼクロゼットで、ごく限られた人にしかカミングアウトしていませんしね。

ただ、長いレズビアン生活のおかげで少しだけわかってきたのが、「周囲」「世間」をすこしだけずらして見ると、わかってくれる人はけっこういるということです。LGBT向けのサイトやイベントに行けば、周りはほぼ「わかってくれる人」ばっかりですしね。そうやって安心できる場所や仲間を確保しつつ、それ以外の場所では守りを固めて乗り切るしかないんだろうなと思っています。
ちゅん様が近くの方でいらしたら、「お詫びにLGBTイベントで何かおごります!」とか言えたところでしたのに。(あ、いや、きっと『お前となんか誰が行くか!』と思われることでしょうが、そういう場所に行きさえすれば全然差別しない『世間』もあるよということで)

私などが今さら申し上げても説得力は薄いかと存じますが、
ちゅん様は大丈夫ですよ。
わかってくれる人も、今後絶対に出てくるし、そして増えていくはずです。

ともかく、当方が必要以上に感情的な反応をしたせいで、このたびはちゅん様に多大なご迷惑をおかけしました。謝罪して4月26日のエントリを削除させていただきます。

それでは失礼いたします。


みやきち

5. というわけで

みやきちとちゅんさんは円満に和解に至っており、この件に関しては、このエントリですべて終了です。以上、長い長い補足記事でした。