南アフリカの男子生徒、女装で登校し退学処分に

南アフリカ共和国で、11年生(日本で言うと高校2年生)の男子生徒Given Seoketsiさんが、女性の服で登校したために退学処分を受けたというニュース。校長から「男子か女子か」と問われて自分はゲイだと応えたところ、母親呼び出しでセクシュアリティについての話し合いをするはめになり、結局放校されてしまったんだそうです。

Givenさんの母親Neisi Seoketsiさんによると、校長はGivenさんは男子か女子かを選ばなければならないと主張したとのこと。一方Neisiさんは自分の息子は生まれつきこうだと言い、「息子は無理やりズボンをはかせようとしてもドレスを着たがった」と説明しています。

南アフリカ憲法アパルトヘイトへの反省からあらゆる差別を禁じていて、同性婚すら合法だったはず。実際には根強いホモフォビアもあるそうですが、タテマエ上、女装程度で退学処分は通らないのでは。……とと思ったところ、教育省が既にこの件に介入しており、省のスポークスマンは「彼をただちに復学させるよう、あらゆる努力をしている」と述べているそうです。

リアル『放浪息子』というか、アメリカのこのへんの事件にも通じるものがありますね。ドレスだろうとズボンだろうと、当人が好きな格好をすればいいじゃないかと思うんですが、そこにこのような根強い抵抗が生じるのはやっぱりジェンダー・ロールの刷り込みというやつなんでしょうか。

ちなみに歴史的に見ると、「男はズボン、女はスカート」という概念が広まったのはごく最近のことであって、人類は男女とも同じ形状の下半身衣をまとっていた期間の方がよっぽど長いんだそうですよ。以下、『パンツの面目ふんどしの沽券』(米原万里、筑摩書房)より引用。


男はズボン、女はスカートという棲み分けが始まるのは、各地域、各民族それぞれ事情も時期も異なるが、大多数の国々においては、ごく最近のことであり、少なくとも、この棲み分けに先行する実に長い長いあいだ、男女の下半身衣は同じ形状をしていた。それは、地球上の各地域で発掘される出土品や文献からも明らかであるだけでなく、たとえば、スコットランドアイルランドギリシャインドネシアの男たちは、今もとくに祭りともなるとズボンではなくスカートを好んではく。人類の基本的衣服はスカートで、ズボンはあとから発見、発明された。あるいは余所から導入されたとする考え方は欧米の衣服史において主流を占める。

なら別に男がスカートはいたっていいじゃん。ジェンダーごとにガッチガッチに「ズボンかスカートか」を分けなくたっていいじゃん。

もう21世紀だっていうのに、ジャンヌ・ダルクを火あぶりにするときの罪状に「男用のズボンを着用した罪」を書き加えた15世紀の教会と同じことをしていてどうする。Given Seoketsiさんが一刻も早く学校に戻れるといいと思います。