オーストラリアの裁判所、レズビアンイベントでの男性立ち入り禁止を認める

オーストラリアの裁判所が、レズビアン・パーティーを開催している業者Pinkaliciousに対し、パーティーを男性立ち入り禁止にする権利を認めたというニュース。よくやった裁判所。これが認められなかったら、怖くてレズビアン・イベントになんて行けないわよ!
Pinkaliciousの取締役Julie MacKenzie氏がこの裁判を起こしたのは、「男性客が女性にしつこく言い寄るつもりだとわかっていてさえも」男性客の入場を止められないことを危惧したから。彼女は今回の判決を画期的なものと評価し、以下のように語っています。


「女性客からの意見では、彼女たちは安全な環境で話ができるように、何か女性専用の場が欲しいとのことでした」
"The feedback I was getting from the girls was that they wanted something exclusive for women to be able to express themselves in a safe environment."

また、パーティーのオーガナイザーのSamantha Stevens氏は次のように述べているとのことです。


「私の経験では、フェミニンなレズビアンはしばしば異性愛者男性のファンタジーの的にされ、そのせいでいっそう、男性からのうとうしい注目の対象になりやすいのです」とStevensは語った。
異性愛者男性が、複数の女性と性的な体験を持ちたいという欲望を達成できるだろうと思ってPinkaliciousのイベントに参加するというのは重大な問題でした」と彼女は続けた。
"In my experience feminine lesbians are often the target of heterosexual male fantasy, and therefore subject to more intrusive attention from them,"Stevens said.
"It is a major concern that heterosexual males will attend the Pinkalicious event," she continued, "in the hope they can achieve their desire for a sexual experience with multiple women."

もっのすっごくよくわかる……。日本にもいっぱいいるもんこういうヘテロ男性。要するに「俺の肉棒の味を知れば」とか「俺も混じって3Pしたい」とか「レズってどんなセックスしてるのー(げへへ)」みたいな発想で頭がいっぱいな連中のことですけど、場違いにもほどがあるっつーのよ。つーか、単純に、彼女と飲んでるときにまで下心満載で話しかけてこられる*1の、ウザいです。男性とデートしている女性にはナンパなんて仕掛けないくせに、どうしてレズビアンカップルになら割り込めると思ってるんですかこういう人たちって。あと、可愛いコ(またはイケてるダイク)を探して鵜の目鷹の目な時に、視界でヘテロ男性がウロウロしてても邪魔だし。ノイズいらん。たとえ下心がないにしても、「『レズビアンの人と』話してみたいです!」みたいに、人の性的なカテゴリーだけに興味を持って近づいてくる人も失礼だから、いらん。

別に男性そのものが全部嫌だとかキライだとかそういう話ではないんですよ。「あきらかにセクシュアリティが違う相手を、いつでもどこでも性の対象または興味の対象として好き勝手に消費させてもらえると思い込んでいるような一部のヘテロ男性」が嫌だっていう話ですよ。念のため。

レズビアンとしては、男女ミックスのイベントに行きたければ最初からゲイ/レズビアンのミックスイベント(あたしはこれが一番好きです)に行くし、そもそも一般的なノンケイベントに行ったっていいわけです。そこでわざわざレズビアン・イベントを選ぶっていうのは、男性がいない環境でリラックスして飲んだり踊ったりナンパしたりしたいからでしょう。そこにいちいち割り込まれるのは嫌ですよやっぱり。異性愛者男性がどうしてもどうしてもレズビアンと接点を持ちたいのなら、ゲイ/レズビアンのミックスイベントに行けばいいじゃん、そこでなら男性だからって排斥されないし。でも、そこでゲイ男性やバイ男性から話しかけられたり口説かれたりしても文句言わないでよね、アンタたちがやろうとしてることはそれと同じなんだからね。

ところで、この判決が出る前日、英国では逆にゲイバーへのレズビアン立ち入り禁止を認めるという判決が出ているそうです。詳しくはこちら↓。

こちらはRebecca Hillさんという女性が、女性だからという理由でゲイバー入店を断られたことを不服として訴えを起こし、敗訴したという話です。Hillさんは「ゲイ・ムーブメントがこれだけ進んだのにまだ差別が行われる場所があるだなんて不快(要約)」と述べているそうですが、それはちょっと筋違いなんじゃないかとあたしは思います。それって、タイ着用が義務づけられるレストランにジャージとビーチサンダルで出かけていって、「自分を入れないのは差別」と騒ぐようなものじゃない?

ちなみにオーストラリア人権委員会は、今回裁判所が下した「レズビアン・イベントでの男性立ち入り禁止を認める」という判決を支持しているとのこと。同委員会のチーフ・エグゼクティブのHelen Szoke氏は、この判決を「不利な条件におかれたグループに、グループをサポートする社交の場を持ち、公共の空間で安全だと感じ」、そして“帰属感”を深めるための機会を認めるものだとして評価している模様。

この「不利な条件におかれたグループ」というのがポイントなんじゃないでしょうか。これがもし、白人専用のサーヴィスを作って有色人種を排斥する、ということであれば、それは「有利な条件におかれたグループが、そうでないグループを排除する」ことであり、認められるべきではないと思うんですよ。でも、レズビアンイベントやゲイバーでの異性立ち入り禁止というのは、「不利な条件におかれたグループが、仲間うちで安心できる場を持つ」ことなんじゃないかと思うんです。で、それは差別というより、一種のシェルターのようなものなんじゃないかと。もちろんセクマイのグループ間にだって権力差はありますし、どこで線引きをするかという問題は残ります。でも、とりあえずあたしは女性立ち入り禁止のゲイバーがあっても全然かまわないと思うし、逆にレズビアン専用を謳ったイベントに異性愛者男性が入り込むのは勘弁してほしいと考えています。

単語・語句など

単語・語句 意味
landmark 画期的な事件
throwback 後戻り、逆行、停滞
bygone 過去の、昔の、すたれた、時代遅れの、旧式の
intrusive みだりに立ち入る、出しゃばる、邪魔になる、押しつけがましい、うっとうしい

*1:実際にこういう経験あります。ものすごくウザかったです。