英国国教会保守派、キリスト教関係のフェスティバルを「ゲイゲイしすぎる」と非難
英国で予定されているキリスト教のアートと音楽のフェスティバルが、英国国教会の保守派圧力団体から「ゲイゲイしすぎる(too gay)」として非難されているというニュース。
これはグリーンベルト・フェスティバルというイベントで、今年8月下旬にチェルトナムで開かれることになっています。このイベントがゲイ団体OuterSpace and JourneyやゲイのバンドAthlete and Royksoppなどを招いていることに対し、福音主義の団体the Anglican Mainstreamが噛みついたとのことです。以下、同団体のウェブサイトから引用してみます。
これは憂うべきことであり、教会のゲイ化と呼ばれるべきである。さらに狡猾なのは、これが他の価値ある、本当に重要でしっかりとした正統信仰の要素と共に行われているということだ。このために、もしそうでなければ怒っていたであろう人々がだまされ、「そんなに悪くないじゃないか!」などという偽りの自己満足に陥らされてしまうのだ。
This is rather worrying: it is called the gayification of the church. Almost more insidious is that it exists, cheek by jowl, with other worthwhile, really important and solidly orthodox aspects, lulling those who might otherwise get upset into a false complacency that ‘things are not really that bad!
同団体はまた、フェスティバルに招かれてスピーチすることになっているゲイのジーン・ロビンソン主教*1のことを、「ゲイ主教のイメージキャラクター」と揶揄し、ゲイ・プライド・デイにロンドンのセントマーチン教会にレインボーフラッグが翻ったことや、カンタベリー大司教がアメリカのLGBTグループと面会したことを「悪」と称しています。
さらに、この団体によると、このグリーンベルト・フェスティバルは「差別的」なんですってよ。
最も腹立たしいのはこのプログラムの差別的な性質である。プログラム自体は、差別と正反対なものとして発表されてはいるけれども。
most galling is the deeply discriminatory nature of the programme, which presents itself as the antithesis of discrimination.
議論を歪めて観客達から片方の側の専門的意見を奪い取ろうとしているのでない限り、グリーンベルトがたったひとつのイデオロギー・アジェンダを合意に推し進め、利己的な目的だけを達成するべき理由はない。放送時間を平等にしてはどうだ? ジーン・ロビンソン(もう一度言うが)だけを登場させて彼の悲しくなるほど素人臭い聖書解釈学を喋らせる代わりに、ゲイ治療運動のイメージキャラクターにマイクを渡したらどうだ?
there is no reason why Greenbelt should only push one ideological agenda and only grind one axe, unless it is wanting to slant the argument and deprive its audience of expert opinion on the other side. What about equal air time for it? What about poster boys or girls for the ex/post-gay movement being handed the microphone, instead of just Gene Robinson (again), with his sadly amaturish biblical hermeneutic?
なるほど、「ゲイを差別する側の意見を主張させないのは差別的」というわけですか。やれやれ。そんなにホモフォビアを振りまくイベントをやりたいのなら、自分で主催すればいいのに。
キリスト教関係のイベントでゲイのグループを招いたり、ゲイの主教を呼んだりすることはチャレンジングだし、当然反発も招きやすいとは思います。でも、それを敢えてやるという心意気をあたしは買いたいです。少なくとも、こうやって反対派の底の浅さを露呈させてみせた(『利己的な目的』とか『悲しくなるほど素人臭い』とか、“充填された語(loaded language)”と呼ばれる詭弁で論点回避せざるを得ないあたりが、反対派の限界をよく表していると思います)時点で、このイベントの意義は十二分にあるんではないでしょうか。
今ざっとWikipediaを見てみたら、グリーンベルト・フェスティバルは1974年に音楽イベントとしてスタートし、現在では30000人もの人が参加する催しになっているとのこと。キリスト教の音楽だけでなく、メインストリームの音楽も多く演奏されており、これまでに出場したアーティストはこんな感じ。
U2, Moby, Cliff Richard, Bruce Cockburn, Martyn Joseph, Steve Taylor, Daniel Amos, Phatfish, Midnight Oil, Michael Franti and Spearhead, Over the Rhine, Iona, Amy Grant, Miles Cain, Lamb, Kevin Max, dfg, Lambchop, Goldie, Jamelia, After the Fire, Larry Norman, Randy Stonehill, Asian Dub Foundation, The Polyphonic Spree, Aqualung, Dum Dums, The Proclaimers, Daniel Bedingfield, Eden Burning, Duke Special, Why? and Delirious?
またスピーチをする人は、誰であれ「正義のために話す人」が歓迎されており、最近ではゲイ・アクティヴィストのピータ・タチェル氏がスピーチしたりしているそうです。
単語・語句など
単語・語句 | 意味 |
---|---|
Anglican | 英国国教会 |
evangelical | 福音主義の |
insiduous | 狡猾な、油断のならない |
joul | あご |
complacency | 自己満足、ひとりよがり |
cheek by joul | 〔…と〕ぴったり接して; 〔…と〕非常に親しくて 〔with〕. |
solidly | しっかりと |
orthodox | (神学上・宗教上の教義が)正しい、正説の、(キリスト教で)正統(派)の、正統信仰の |
poster boy | イメージキャラクター、(広告写真の)男のモデル |
galling | いらいらさせる、しゃくにさわる、腹の立つ、腹立たしい |
antithesis | 対照、正反対(の事物) |
have an ax to grind | 腹に一物ある、ひそかなたくらみがある、ひそかに利己的な目的をいだいている |
slant | (洗脳・強制などで)(人の)考え方をゆがめる、傾向を変えさせる |
amaturish | 素人臭い |
hermeneutic | 解釈学、聖書解釈学 |