ハッチャーソン牧師「チームにゲイはいらない」「ゲイはNFLに所属しない」

NFL(全米フットボール連盟)プレイヤーで現在は牧師のケネス・ハッチャーソン氏が、ワシントン・ポスト紙の「チームにゲイはいらない」と題したブログ記事で、「チームメイトを不快にさせる同性愛者は、プロのスポーツチームに所属しない」と発言したというニュース。

問題のブログ記事はこちらです。

The League: Openly gay players in the NFL would hurt teams and football - Kenneth Hutcherson

ちょっと訳してみますよ。


フットボールは軍隊のようなものだ――それは戦場なんだ。戦争中は、隣にいる男を信頼しなければならない。というわけで、チームメイトがシャワー中に何に惹きつけられるかが違っていたら、チームに悪影響が出る。チームの一体感が破壊されてしまう。
男というものは異性愛者と一緒にいた方が快適なのだ。(同性愛者がチームにいるのは)女性がチームやシャワーの中にいるようなものだ。シャワーに駆け戻ることを考えていたら、どうして試合に集中できる? すさまじい影響が出るよ。チームのためにも個人のためにも、カムアウトはしない方がいい。
何百万ドルもの価値があるチームにいるときは、どんなものであれ、チームの一体感を乱すものは排除されねばならない。同性愛は非常に不和を生じさせやすい問題だ――それはチームの和に悪影響を及ぼすのだ。

Football is like the army -- it's a battle field. In war you have to trust the guy that's next to you. Now, if a teammate has different views about what they're attracted to in the showers it's going to affect the team. It'll destroy the oneness.
Men are going to be more comfortable with other heterosexuals. It's like having a woman on the team or having a woman in the shower. How can you keep your mind on the game when you're thinking about running back to the showers? It would have a tremendous effect. It would be safer for the team and the individual if they didn't come out.
When you have a team worth millions and millions of dollars anything that would mess with the oneness must be removed from the team. Homosexuality is a very divisive issue -- it would affect the camaraderie.

典型的な体育会系ホモソーシャル発言だと思います。これじゃ、スポーツの最中に性のことばっかり考えてるのは、同性愛者じゃなくてほかならぬ自分じゃないの? だいたい軍隊で戦功をたたえられて勲章をもらっているゲイもいれば、ゲイジャパンニュースの記事にもあるエセラ・ツアオロ氏のようなゲイのNFLプレイヤーだっているのに、そのへんは完全スルーですかそうですか。同性愛者はホモフォーブ(同性愛嫌悪を抱えている人)のガラスのハートのお守りをするために、一生懸命異性愛者のふりをしてろってことですか。
そもそも、そんなにシャワーのことが気になるのなら、シャワールームを個室にすれば済むことじゃん。何百万ドルも稼いでるチームなら、それぐらいのお金はあるでしょうに。

あと、ハッチャーソン牧師の定義では、「Men=異性愛者の男性(ゲイ男性は含まれない)」「heterosexual=異性愛者の男性(異性愛者女性は含まれない)」ってことになっているらしいところもえらく差別的ですな。同性愛嫌悪と女性蔑視で「一体感」とやらを維持しようとしているあたりが、非常にホモソーシャリティーっぽいと感じました。

ちなみにこのハッチャーソン牧師はアフリカ系なんですが、


同氏は、同性愛者の権利は公民権と見なされるべきでないとして、ワシントン州ドメスティックパートナー登録に反対している。 「これは、人種差別のような公民権問題ではない。比較対象にならない」と述べている。また、「私の教会には、同性愛者から異性愛者になった人がいるが、黒人であることを変えることはできない」と付け加えた。

とのことですよ。してみると彼はEx-gay(同性愛者を異性愛者に『転向』または『回復』させるという触れ込みの『治療』。主に宗教的な動機で運営されています)の信奉者なのでしょうか。しかし、先日「「同性愛者を異性愛者に『転向』させる治療は無意味」専門家が指摘 - みやきち日記」というエントリでもお伝えした通り、Ex-gayは性的指向を変えられないばかりか、クライアントに害を及ぼしうると専門家は指摘しています。あるカテゴリでマイノリティだからって、他のカテゴリでのマイノリティについて詳しく知ろうとできるわけでも、また受容的になれるわけではない、という苦い現実がまたひとつ。なんか非常に悲しいっつーか、つらいです。

単語・語句など

単語・語句 意味
cameraderie a spirit of friendly good-fellowship