『群青』(宮木あや子、小学館)感想

群青 (shogakukan paperbacks)群青 (shogakukan paperbacks)
宮木 あや子

小学館 2008-09-30
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沖縄を舞台とした恋愛小説。あ、百合じゃないですよちなみに。2009年公開の映画『群青』の「原作本」という触れ込みの作品ですが、厳密にはこれ、まず映画の脚本ありきで、脚本をなぞる形で書かれた小説なんですよね。つまり、原作というよりはノベライズに近い位置にある作品だと思います。そのため、いつもの宮木あや子調とは随分違っており、『花宵道中』等でファンになられた方はそのへんの事情を踏まえて読まないとちょっと拍子抜けしてしまうかもしれません。

ただし、この作者さん特有の色彩の鮮やかさは今回も群を抜いており、珊瑚の赤、鍵盤の黄色、葉の緑、そしてタイトル通りの「群青」など、とにかく色がくっきりはっきり脳裏に浮かぶ描写の数々はほんとうにすばらしかったです。どうせならストーリーの方も最初から最後まで全部あや子節(って書くと演歌みたい)にして、それを映画化しちゃえばよかったのに、と思うんですが、そうもできないのがオトナの事情ってやつでしょうか。ならいっそ『花宵道中』を映画化しちゃえばよかったのに。『さくらん』ができるんならこちらも可能だと思うんだがどーか。