同性カップルも異性カップルと変わりなく子育てをしている(カナダ研究)

公表されてこなかった研究結果

ゲイジャパンニュースさんに興味深い記事がありました。まず、いくらか引用してみます。


(カナダ/オタワ)同性カップルの子育ては、異性カップルの家庭と比べて、なんら変わりない。カナダでこのような研究結果が公表された。

同性婚についての議論が白熱していた2003年、当時の政府の命で行われたこの研究は、最近まで公表されていなかった。研究を担当したコンコルディア大学のポール・ヘイスティングス教授の情報開示要求によって、公になった。
研究報告は、二人の母と生活する子供と、父と母と生活する子供を比較した際、同レベルの社会的能力をもっていると結論付けている。
(引用者中略)
ヘイスティングス教授は彼の推測に過ぎないとしながらも「この研究が長い間公表されてこなかったのは、2006年にステファン・ハーパー首相の保守政権が誕生したためではないか」と語っている。ハーパー首相は選挙期間中、同性婚禁止への議論を再開することを公約として掲げ、昨年12月には実際に動議として国会に提出したが、動議の採択は否決された。教授は、「同性カップルが異性カップルと同様に子育てが可能だと示すこの研究結果は、ハーパー政権にとって都合の悪いものだったのだろう」と語る。

「蛇が嫌い」なそのわけは?

上の記事を読んで思い出したのが、「蛇が嫌い」と主張する知人の話。「なんで蛇が嫌いなの?」と訊いたら、顔をしかめながら「だって、ヌルヌルしてるんだもん!」と言うんですよ彼女は。
でも、田舎育ちのあたしは熟知していますが*1、蛇はヌルヌルなんてしていません。蛇のからだはさらさらすべすべと乾いていて、むしろ良い手触りです。でも、いくらそう言っても彼女は「嘘! とにかく蛇は嫌いなの」と繰り返すだけ。
よくよく聞きただしてみると、彼女は蛇に触るどころか、間近で蛇を見たことすらほとんどない人でした。「結局この人は『ヌルヌルしているから』蛇が嫌いなんじゃないんだな。最初からただなんとなく蛇を嫌っていて、その嫌悪感を合理化するために『ヌルヌルしているから』という理由を後からくっつけているだけなんだなあ」と、そのとき思ったものです。

同性カップルの子育てについても同じ

同性カップルの子育てについての研究結果が何年間も伏せられてきたのも、これと同じようなものなんじゃないかとあたしは疑っています。要するに、「嫌悪感を合理化する理由を手放したくなかった」ってことなのではないかと。
同性カップルの育児に異を唱える人が好んで使う言い回しは、「子どもに悪影響が出る(または、『子どもが可哀想』『子どもが歪む』『子どももホモ/レズになってしまう』など)から、同性カップルは子育てすべきでない」です。しかしね、そこには先述の蛇嫌いの知人の例のような、

  1. まず「同性カップルなんてキモイ、怖い」という根拠なき嫌悪感が先にあって、
  2. それを合理化するために子どもがどうのこうのと言い出す

……という構造があるんじゃないかとあたしは思うわけです*2。だって、たいていの場合、ゲイ/レズビアンカップルの知人すらろくにいない人や、同性カップルに育てられた子どもなんてまったく見たこともない人が、得々として「子どもが可哀想」論を持ち出すわけですからね。逆に言うと、同性愛者を思う存分バッシングする口実が欲しいから、子どもに悪影響が出てくれなきゃ困るわけですよ、そういう人たちは。同性愛とか異性愛とか言う以前に、「愛」がないことだと思います。まともな研究結果がどんどん公表されて、セクシュアルマイノリティに育てられている子どもたちに一方的に「お前らは可哀想な(歪んだ/ホモやレズに『なってしまう』etc.)存在」なんていう失礼なレッテルが貼られることがなくなってくれるといいなと思っています。

補足および関連情報など

  1. 同性カップルの子育てについて、あたしは、「異性カップルと差異がないから認めろ」とか、「差異がないから良いことだ」と言っているわけではありません。差異があっても別にいい。もしも(あくまでも、もしも)子どもにとってマイナスとなるような差異が発見されたら、そのマイナス分が埋められるような支援が得られるシステムをつくれば済むだけの話だと思っています。
  2. ちょっと検索してみて、同性カップルの育児について日本語で書かれた論文をみつけたのですが、たいへん興味深い内容でした。こちらもぜひどうぞ。→Lesbian-motherの子育ては健全か―発達心理学分野の実証研究とそれをめぐる議論― 有田啓子[PDF]
  3. イカップルの子育てについては、こちらをぜひどうぞ。→YouTube - 「Two Fathers」日本語字幕版 【情報元:に し へ ゆ く 〜Orientation to Occident - 「2人のパパ」日本語字幕版YouTube画像でました
  4. イカップルの子育てに関しては、こんな本も出ています。→『男だけの育児』(ジェシ・グリーン(著),伊藤悟(著)、飛鳥新社)

*1:蛇なんてそのへんをうろうろしていたので、平気でつかまえて振り回したりしていました。ごめんよあのときの蛇たち。それにしても当時はヤマカガシに毒があるなんて知らなくて平気で触っていたのですが、よく無事だったものです。噛まないでいてくれてありがとう、あのときのヤマカガシたち。

*2:これと同じように、「母子家庭は良くない」という先入観がまずあって、それを合理化するために「『子どもが歪むから(あるいは可哀想だから、非行に走るから)』母子家庭は良くない!」なんて言い出す人なんてのもいますよね。