映画『2番目に幸せなこと』感想

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トーマス・ロペルスキー

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ゲイ映画というより、「尻軽で身勝手な女に利用された、かわいそうなゲイの話」

尻軽で身勝手な女に利用された、かわいそうなゲイの話。「女の『子ども持ちたい』願望にうかつに付き合うと、ロクなことになりませんよ」というのが教訓。「アメリカン・パイ」を聴きたい気分のときにボケーッと見るにはいいかも知れないが、それ以外ではレンタルビデオ代すら惜しい作品と言えましょう。

友情? どこに?

この映画の何が失敗って、ロバートとアビーの間の「絆」だの「長年の友情」だのがちっとも見えてこないこと。口先だけで「長年の友情は強いはず」とかペラペラしゃべるシーンは一杯あるけど、このふたりがこれまでどういう付き合いをしてきて、お互いのどんなところを大事に思っているのかはまるで見えてこない。だから話全体が嘘くさく見えちゃうの。

嫌な女アビー

だいたいさー、マドンナ演じるところのシングルマザー・アビーが、そりゃもう嫌な女なんだわ。「愛されるためには、たとえ這いつくばってでも自分の全てを変えるわ」と言い切る頭の悪さといい、「愛する人の子どもが欲しい」とか言うわりには無責任にうっかり妊娠する間抜けさといい、あげく父親になれとロバートに迫る強引さといい、最低。

友情結婚(みたいなもの)なのに相手の性生活を縛ろうとするのも嫌な感じ。自分はもう欲望を感じないとか言いつつ、こっそり「神様、私にもいい人を見つけてください」とか未練タラタラに祈ってるのも下げ。アビーには他にもかなりひどい点があり、どんな残酷な女だと思いました。アビーに何かいい点があるとしたら「カラダ」、これだけですね。性格はろくでもないわ。

薄っぺらな登場人物たち

こんな女のためにわざとキャマキャマしい格好をして昔の男に報復してやるロバートくんは、ただのお間抜けなお人よしにしか見えません。いったいアビーの何が良くて長年友達やってんのか、ひとつも理解できないわ。

お人よし、と言えば、ロバートの両親もそうなんだけどね。ゲイの息子が女を孕ませた割には、なんだか能天気な反応しかしないの。生身の人間だったらもう少し驚くとか怒るとか何かあるだろうに。無論、映画はフィクションなんだから、何から何までガチガチのリアリズムに徹する必要はないわ。だけど登場人物が全員ペラペラの書割にしか見えないってのは、あきらかに興ざめよ。

機械音がしてきそう

この話の中でいちばんペラペラなキャラは、アビーの産んだ息子・サム。一度も怒ったり泣いたりわがまま言ったりせずに、ひたすら「アメリカの理想の少年」路線ですくすく育ってるんだけど、あまりに出来が良すぎてなんか機械音がしてきそう。皮膚なんかラテックスでできてるんじゃないかとあたしは本気で思ったわ。

そんな嘘くさいガキを溺愛するルパート・エヴェレットの姿がまた痛々しくてですね。芝生で犬と遊んだり、絵本を読んでやったりと、何のひねりもない「アメリカの理想の父と子」みたいなシーンばかりで、隅から隅まで偽善っぽく見えてしまいました。

まとめ

というわけで、少なくともあたしにとっては、ビデオのパッケージにうたってあるような「親子の愛」だの「家族の絆」だのはひとつも感じられない映画でした。特に、ゲイのロバートに感情移入しながら見ると、イタさもひとしお。『クレイマー、クレイマー』を現代風に作ろうとして、じゃ、ゲイと未婚の母って組み合わせにしようぜ、ルパート・エヴェレット使って相手役にマドンナでも持ってくれば客は入るだろう、と安易に作った話にしか思えませんでした。