『うつうつひでお日記』(吾妻ひでお、角川書店)感想
うつうつひでお日記 吾妻 ひでお 角川書店 2006-07-06 売り上げランキング : 89 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
良かった点その1:読書日記として面白い
小説といい漫画といい、吾妻氏の読書量はとにかく膨大で、しかもジャンルが多岐にわたっているので、面白い本を探すガイドとして使えそう。
良かった点その2:豊富な美少女絵
前項の読書量の話とからむのですが、吾妻氏が読まれた漫画の美少女キャラの模写がざくざく載っていて面白かったです。その絵がまた、CLAMP描こうとナウシカ描こうと『最終兵器少女』描こうと『GANTZ』のタエちゃん描こうと、全部きちんと「吾妻ひでおの絵」になっているのがすごいなと思いました。「コンプエース」の作家さんの模写ばかり11枚も載せた回なんてのもあって、楽しいです。
もちろん吾妻氏オリジナルの絵も豊富で、楽しめます。ミャアちゃんあたりはともかく、『ふたりと5人』とかまで出てきていて、懐かしくて腰抜けました。あと全然美少女じゃないんだけど、タバコオバケがあちこちにいたのも嬉しかったです。
良かった点その3:うつ病の描写
だるーい感じや突然不安になる感じの描写など、とてもリアルなのにまったく重苦しくないのがユニークです。いや、「重苦しくない」どころか、既に一種のギャグにすらなっていますね、あれは。元々、余分なものをそぎ落として淡々と表現する作風の人ではあるけど、自分の病気までそのタッチでさらりと描いてしまうというのには驚きました。個人的には、横にいてささやく人の描写(pp114-115)に「わかるわかる」とニヤニヤさせられました。うつの時って、確かにあんな感じになるよねえ。
その他注意事項
『失踪日記』とは違い、淡々と文章で書いた日記に絵を添えるという絵日記スタイルの本なので、「漫画らしい漫画(1つのエピソードに何コマも使って、台詞やカットの切り替えで丁寧に説明してもらうスタイル)でないと頭がついていかない」というタイプの人には読みにくいかも。ページが進むに随って、だんだん漫画っぽい読みやすい形になっては行くのですけれどね。