イディナ・メンゼルWorld Tour 2015名古屋公演感想

2015年6月2日に愛知芸術文化センターで開催されたイディナ・メンゼルのコンサートに行ってきました。すばらしかった。アカペラの"For Good"の感動が、まだ頭から抜けません。あれだけのパワー・シンガーの歌を、ライブで、しかも日本で聞けるなんて僥倖そのもの。途中から裸足になってくるくる踊りながら歌うイディナの姿も愛らしかったし、本当に行ってよかったです。

セットリストは、日本の観客にもわかりやすいようにという配慮なのか、比較的よく知られた曲中心でした。最初の2曲からいきなり"Defying Gravity"と"Don't Rain On My Parade"が来るという大サービスっぷりに「もう死んでもいい」とか思いましたが、その後の曲目もトークも楽しすぎて、「死んでる場合じゃない」と蘇りました。「『ウィキッド』のストーリー知ってる? わたし、オリジナル版であの女の子の役だったの。毎週毎週顔を緑色に塗ってた。今も緑色だけどね!(この日の衣装は緑色のドレスでした)」という前フリからはじまる"The Wizard and I"、「ブロードウェイの先駆者で、わたしがとても尊敬している女性がいて、名前はエセル……」と言いかけたとたんに観客席が「マーマン」とつぶやくという阿吽の呼吸でなだれこむ"Everything's Coming Up Roses"や"Anything Goes"等々、もう最高。こぶしのききまくった"Love For Sale"もよかったなー。この曲、DVD『IDINA MENZEL LIVE BAREFOOT AT THE SYMPHONY』にも収録されてるんですが、生で聴くと迫力がやはり段違いでした。

観客の中から志願者をつのってひとりずつデュエットした"Take Me Or Leave Me"もステキでした。立候補したお客さんたち(4人ぐらい?)の熱いファン心も伝わってくる、楽しい演出だったと思うわ。『Rent』に関しては、ブロードウェイでの開幕直前に亡くなったジョナサン・ラーソンの話もしみじみとよかった。"No Day But Today"のサビの部分では、マイクを観客席に向けて、みんなで合唱。

最近のミュージカル・ナンバーとしては、『If/Then』から、2014年トニー賞授賞式でも歌われた"Always Starting Over"が登場。そんでね、『Rent』についてのトークでの、「新しい友達との出会い」の話と、この曲の「毎日が新しい人生の始まり」というテーマとが、その後、アンコール(1度目)での"For Good"につながってくるわけよ。

あたし、これがイディナさんの初来日公演だということは知ってたけど、なんと、ワールド・ツアー自体が初だったんですってね。そんで、「子どもの頃から歌手になるのが夢でした。今こうして世界中を回って歌を歌って、新しい友達と(と観客席を指す)出会えたことが本当に嬉しいです」(大意)と語ってから満を持して歌い出すのが、あの"For Good"なの。しかも、アカペラで。あの愛知芸術文化センター(通称『芸文』)の、「ナゴヤドームかよ」と突っ込まれそうな高さにある5階席まで余裕で届いちゃうんだぜ、その肉声が!! 翌日にいたるまであたしの頭ん中で"For Good"がぐるんぐるん回ってる理由が、おわかりいただけたでしょうか。いやあ、すごいもん見た。

なお、みなさんお待ちかねの"Let It Go"はアンコール前の最後の曲として登場。サビの部分は以前エレンの番組で披露していた通り、きれいな日本語で歌ってくれました。2度目のアンコール曲は、『アニー』の"Tomorrow"。なお、別にミュージカルナンバーだけのコンサートだったわけではなく、「まだ誰もわたしを知らなかった」(本人談)頃に出したデビューアルバムの曲や、ジョニ・ミッチェルの"River"、最近ようやく日本版CDが出た『I Stand』収録曲もありましたよ。総じて中身の濃い、大満足のコンサートでした。こういうライブのパフォーマンスって一期一会なので、公演を知ってすぐチケット買ってよかったですホント。