新しくしようという意欲は買うんだけど―映画『アニー』(2014)感想

作品についての予備知識ほぼゼロ(トニー賞授賞式のパフォーマンスを見たことがあるぐらい)の状態で、2014年リメイク版の映画『アニー』を見てみました。感想は「あちこち好きな部分もあるんだけど、なんだか腑に落ちない……」でした。で、遡って1982年版を初めて見たところ、まるで答え合わせのように「あれはこういうことだったのか」とわかりました。結論から言うと、2014年版の方は「現代ならではの新しさにチャレンジする一方、細部の詰めが甘くなってしまった」という作品だと思います。アン・ラインキングのいない穴は埋められていないし、何よりアニーの偽両親の設定があやふやすぎてクライマックスの盛り上がりに欠けるところが大失敗だったんじゃないかなー。

1982年版のアン・ラインキングのパフォーマンスというのは、こんなです。

誰も勝てんわ、こんなん。ダンス技術はもちろん、全体に漂うブロードウェイ・ブロードウェイした華やかな雰囲気と、「映画ですのでがんばってロケしてみました!」という壮大な場面設定の取り合わせもおもしろいのですが、2014年版だとそのおもしろさもないんですよね。アニーの設定が孤児から里子に変更されたため、ハニガンさん宅でのダンスはなんだかこじんまりしているし、大富豪が人嫌い設定になったため、使用人との群舞もないし。その分何かプラスされたものがあればいいんですが……あったか、プラス要素?

2014年版の方で、大富豪が立候補予定の成金で、いかにもなスピンドクターがついているというあたりはすごく斬新でよかったと思うんですよ。でも、アニーの偽両親登場のくだりでそのスピンドクターをうまくからませることができず、肝心のクライマックスが「どこの誰なのか誰も知らない人たちが、何だかよくわからんがアニーに危害を加えるかもしれない」という間の抜けたものになってしまったのは残念。だいたいこの偽両親(2014)、設定の都合上(ハニガンさんにとっても知らない人だから)"Easy Street"も歌わないし、それで見せ場がひとつ減っちゃってますよね。キャメロン・ディアスにちょこっと口ずさませておけばいいってものではないと思うの。

逆に2014年版ですばらしかったのは、大富豪・スタックスさんを演じるジェイミー・フォックスの鳥肌が立つような歌唱力。1984年版のアルバート・フィニーは名優ではあれど、歌は苦手でしたからね。しかし旧作の方も、実は日本語版DVDを持っていれば上條恒彦さんのめちゃめちゃうまい吹き替えで見られちゃうので、たいした弊害ではなかったりします。というわけで、総合力で1982年版の圧勝かなー。ここに至ってようやく、ニール・パトリック・ハリスが今年のオスカー授賞式でアニーのリメイクについて言っていたジョークが理解でき、たいへん納得したあたしでした。そのうち舞台版も見に行こうと思ってます。