『ゴーン・ガール』(ギリアン・フリン、Crown)感想

気になってるんだけど映画館に行くヒマが取れそうにない映画『ゴーン・ガール』の原作本を、kindle版(英語)で読破しました。

Gone Girl: A Novel (English Edition)

Gone Girl: A Novel (English Edition)

日本語版は目下、紙の本しか出てないみたい。
ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)

どんな話かご存知ない方のためにAmazonからあらすじを引用すると、こんなです。

ニックは三十四歳、ニューヨークで雑誌のライターをしていたが、電子書籍の隆盛で仕事を失い、二年前、妻エイミーとともに故郷ミズーリに帰ってきた。しかし都会育ちの妻にとってその田舎暮らしは退屈きわまるものだった。結婚五周年の記念日、エイミーが、突然、謎の失踪を遂げる。家には争った形跡があり、確かなアリバイのない夫ニックに嫌疑がかけられる。夫が語る結婚生活と交互に挿入される妻の日記。異なるふたつの物語が重なるとき衝撃の真実が浮かび上がる。大胆な仕掛けと予想外の展開、「NYタイムズ」で第一位に輝いた話題のミステリ登場。

感想。

  1. おっもしろかったー!!
  2. 怖かったー!!
  3. 余計に映画版が見たくなっちゃったじゃないかどうしてくれる。

こんなに没入して読んだスリラー(日本風に言うなら『サスペンス小説』か)は久しぶりです。ネタバレしない範囲で本作の雰囲気を形容するなら、「スティーブン・キングのとある作品の怪物が、クリスティン・チェノウェスのあの有名曲を歌いながら意気揚々と大通りを歩いているかのごときおそろしさ」でしょうか。調べてみたら、キング自身がこの本を「2012年に読んだ本ベスト10冊」に入れていたのにびっくり。うんうん、あの恐怖はキング好みだと思ったわー。

お話は3部構成になっており、1章ごとにニックとエイミーの1人称視点を切り替えながらテンポよく続いていきます。見どころは第1部の「藪の中」状態の不吉なゾクゾク感と、第2部の強烈なひねり(しかも1度や2度じゃない!)、そして全体を貫く疾走感でしょうか。キャラの内面のグロテスクさ、ひいては「機能不全な結婚生活」というもののグロテスクさを着々と腑分けしていく手さばきもすばらしかったです。ああ、「結婚」と言えばこの小説、キングだけじゃなくてアン・タイラーも連想したわ。『結婚のアマチュア』を恐怖小説にしたら、こんな感じになるんじゃないかと。

残念なのは、ストーリーがド迫力なわりに、結末がやや小ぶりなまとめ方だったところ。もっと度肝を抜くような1文で終わるのではと期待していたため、正直「あれ、これだけ?」と思ってしまいました。それだけに余計、「映画版だと、これ、どうなるの!?」と気になって気になって仕方ないんですよう。何せ監督がデビッド・フィンチャーでしょう。どういう切り口でオチをつけるのか見たくてじりじりしてしまいます。てなわけで、結局DVDも買ってしまうかもしれません。とりあえずDVDが出るまでの間、ギリアン・フリンの他作品を読みながら待つことにしようと思います。こんなに凄い作家をこれまで見逃していたとは、迂闊なりみやきち。