「TIME」のゲイ・キス表紙にまつわる、ちょっといい話

「TIME」誌表紙に同性同士のキスが登場 - みやきち日記の続報。テキサス州異性愛者の女子高校生が、校長の反対にも負けずにこの表紙を持ってイヤーブック(卒業アルバムのようなものだと思ってください)の写真を撮り、大きな話題となりました。この表紙写真のレズビアンカップルのひとり、クリステン・エリス=ヘンダスン(Kristen Ellis-Henderson)さんが、ハフィントンポストでこのことについて書いています。

詳細は以下。

「TIME」の表紙というのはこちら。男女ともに本物の同性カップルのキス写真が使用されています。


そして、テキサス州ヘテロの女子高生モーガン・シスク(Morgan Sisk)さんがこの表紙を使ってイヤーブック用に撮った写真がこちら(の、右半分)。

「TIME」表紙のレズビアンのひとり、クリステン・エリス=ヘンダスンさんは、Facebookで友人がこの写真をシェアして初めて何が起こっているか知ったそうです。クリステンさんは、自分だったらあの年齢で同じことをする勇気はなかっただろうと書いていますが、あたしも同感だわ。

モーガン・シスクさんは18歳。ハイスクールの最上級生で、秋からデントンの大学に進学することがきまっています。イヤーブックの写真で自分の政治的意見を表明しようという考えから、この「TIME」2013年4月8日号を持って写ることにしたのだそうです。ところがカメラマンは写真撮影を拒否。そこで校長に直談判するも、やっぱり拒否。

この後どうなったか、モーガンさんはFacebookで自ら説明しています。


校長先生はわたしに、同性愛者の権利は学校で話し合ってもらいたい話題ではないと告げ、他の雑誌を使うか、雑誌をまったく使わないかのどちらかにするようにと言いました。どちらの選択肢も自分にとって最善の策とは言えず、わたしは「TIME」を使う権利のために立ち上がろうと決めました。放課後もこのことが頭を離れず、これはもはや雑誌や写真の問題ではなく、わたしの学校のLGBTコミュニティに対する差別と、憲法で保証された基本的人権の侵害の問題だと理解しました。

翌朝学校に行って、自分が直面している差別に抗議するため、1時間以上かけてロッカーを飾り付けました。しかし、ロッカーの飾り付けを終えてから1時間もたたないうちに校長が破いてしまい、口論になりました。わたしの抗議に対し、校長はあの飾り付けは「気を散らせる」と言いました。
My principal told me that gay rights was not a topic that he wanted to be discussed at the school and said that I had to either use a different magazine or not use a magazine at all. I decided that it was not in my best interest to use either of those options, but rather to stand up for my right to use the copy of TIME magazine that I had chosen. After school I couldn’t get any of this off of my mind, and I realized that the issue was no longer about the magazine and photo but about the discrimination my school was holding against the LGBT community and the infringement of basic constitutional rights.

The next morning when I got to school I spent over an hour decorating my locker in protest of the discrimination I was facing. However, not even an hour after I had finished the decoration on my locker, the principal tore it down and when I protested that in an argument with him, he claimed that it was “distracting.”

その飾り付けというのが、Facebookの写真の左半分なわけです。

その後校長はモーガンさんの母親に電話し、親から注意させようと画策。しかし、そもそも娘に平等を尊ぶようにと教えたのはこのお母さんなので、この試みは無駄に終わりました。お母さんは電話で校長と議論したあげく、仕事を休んで学校に赴き、娘と自分の考えを説明したのだそうです。結果としてモーガンさんは「TIME」を持ってイヤーブックの写真を撮っていいことになりました。

モーガンさんはこう書いています。


このできごとは小さく見えるかもしれないが、正直なところ、忠実なクリスチャンたちの住む人口わずか1300人の町には衝撃が走った。
This event may seem small but, in all honesty, it sent a shockwave through our staunchly Christian town that has a population of only 1,300 people.

ちなみに、クリステンさんが奥さんのサラさんとこのキス写真を撮るにあたっては、いろいろと心配もあったのだそうです。たとえば子どもに危害が加えられないかとか、地域社会や教会の注意をひいてしまうのではないかとか、そういうことです。しかしながら、まさか自分たちが表紙に載ることでテキサス州サンダウンの18歳高校生がヒーローとなるとは予想だにしなかったと彼女は書いています。
元記事の最後の部分で、クリステンさんはこのように書いています。


モーガンがわたしの家族に味方してやってくれたことが、ひとの命を救うでしょう。そして、彼女の母親がモーガンと一緒にしてくれたことは、他の母親たちが――セクシュアリティと奮闘している子どもを持つ母親たちや、子どもに寛容と愛と受容を教える必要がある母親たちが正しいことをする助けとなるでしょう。
モーガン、この「小さなできごと」のためにこそ、わたしと妻は「TIME」の表紙でキスしようと決めたんです。18歳でこれなら、20歳のあなたがどんな風になるのか待ちきれません。
What Morgan did by standing up for my family will save lives. And what her mother did alongside her will help other mothers -- mothers whose kids are struggling with their own sexuality, mothers who need to teach their own children tolerance, love and acceptance -- do the right thing.
Morgan, this "small event" is exactly why my wife and I chose to kiss on the cover of Time. If this is you at 18, I can't wait to see you at 20.

たぶんね、この小さな町のハイスクールにだって、クロゼットのゲイ生徒はいると思うのよ。その子たちのためにも、モーガンさんはすごくいいことをしたと思います。と言うと、「こんな目立つことをすると余計にゲイが叩かれる! 黙って時が過ぎるのを待つべき!」とか言い出す人がきっといると思いますが、それ、ガンディーに向かって「『非暴力、不服従』ではインド人が英国人から叩かれる!『非暴力、服従』にしろ」って言うのと同じだから。黙って服従してるだけじゃ、いつまでも何も変わらないよ。モーガンさんも、そのお母さんも、不安をおしてTIMEの表紙になることを選んだクリステンさんも、あたしにとっては全員ヒーローです。