「ホッケーはみんなのもの」NHLコミッショナー、LGBT選手を歓迎すると表明

2013年4月11日、北米アイスホッケーリーグ(NHL)のコミッショナー、ゲイリー・ベットマン(Gary Bettman)氏が、NHLはLGBTの選手やファンを歓迎すると表明しました。

詳細は以下。

NHLは4月11日、アイスホッケー選手パトリック・バークが創始者のひとりである「You Can Play」プロジェクトに協力すると正式にアナウンスしました。「You Can Play」プロジェクトというのは、スポーツ界からLGBTへの差別をなくすための運動です。協力を公表するにあたっての、ベットマン氏の声明は以下。


NHLコミッショナーのゲイリー・ベットマンは、このニュースを告げる声明でこう述べた。「わたしたちのモットーは『ホッケーはみんなのもの』です。『You Can Play』と協力することで、この立場が明瞭かつ決定的なものであるとはっきり示すことができます。NHLはこれまでにもLGBTコミュニティへの支持を示してきましたが、今回のNHL選手協会との共同事業で、氷の上でも、ロッカールームでも、観客席でも差別を許さないというのがNHLの公式方針であると再確認でき、うれしく思っています」

"Our motto is 'Hockey Is For Everyone,'" NHL Commissioner Gary Bettman said in a statement announcing the news, "and our partnership with You Can Play certifies that position in a clear and unequivocal way. While we believe that our actions in the past have shown our support for the LGBT community, we are delighted to reaffirm through this joint venture with the NHL Players' Association that the official policy of the NHL is one of inclusion on the ice, in our locker rooms and in the stands."

この続きが特によかったです。

「わたしがもっとも大切だと思うのは、わたしたちは今、メジャーなプロ・リーグとメジャーなプロ選手たちの団体が、差別をなくすために一歩前進して公式声明をする瞬間を目撃しているということです。これは、『ああ、そのことなら対処するよ』ということではありません。『ああ、寛容に扱うよ』ということでもありません。これは、ホッケーのコミュニティがLGBTコミュニティに向かって、『あなたがたを招待します。あなたがたを歓迎します。あなたがたを喜んで受け入れます』と言っているということなのです。これは大きなことです。スポーツの観点からみて、歴史的なことなのです」
"I think the most important thing is that we're seeing a major professional league and a major professional players' association step up and make an official statement about inclusion. This isn't, 'Oh, we'll deal with it.' This isn't, 'Oh, we'll tolerate it,'" he said. "This is the hockey community saying to the LGBT community, 'You are invited. You are welcome. You are embraced here.' This is huge. From a sports perspective, this is historic."

これを読んでてすごくすごく嬉しかったのが、「対処」でも「寛容」でもなく、招待し、歓迎し、喜んで受け入れると言ってくれているところです。というのはね、これは日本語でも英語でもそうなんですけど、LGBTへの「寛容」("tolerance")を強調するのって、結局、「LGBTは罪や欠点がある存在だけど、広い心で受け入れて/大目に見て/がまんしてあげましょう」と言ってるのと同じですから。発話者の主観的意図はどうあれ、客観的に見て失礼なんです。

以下、参考までに辞書から引用しておきます。


かん‐よう〔クワン‐〕【寛容】
1 心が広くて、よく人の言動を受け入れること。他の罪や欠点などをきびしく責めないこと。また、そのさま。「―の精神をもって当たる」「―な態度をとる」「多少の欠点は―する」


tolerate
[動](他) 1 [III[名]/doing][V[名]doing]
〈他の説・習慣・行為などを〉許容[黙認]する, 大目に見る;…にがまんする, 耐える, 〈…するのを〉耐える, 許す
tolerate one another お互いに辛抱しあう
tolerate criticism 非難に耐える[を許す]

こういう指摘をすると、「単なる言葉のアヤなのに/そんなつもりで言ってるんじゃないのに悪意に取るなんて」とお怒りになる方も多いことでしょう。でも、その前にちょっと考えてみて。いろんな選択肢がある中から、なぜ無意識的にこの単語を選んでしまったのかというところにこそ、問題の根っこがあるのよ。詳しくは『差別語・不快語』(小林健治、にんげん出版)とか読んでみるといいと思うよ。

NHLがこうした「寛容」の罠に陥らず、礼を尽くしてLGBT歓迎を表明したあたり、わかってるなあと思いました。ゲイ選手の存在をどうとらえるかでいまだに議論している野球やフットボールよりはるかに先を行っていると思います。今後かっこいいLGBT選手がいっぱい出てくるといいな。