既婚同性カップルたちが語る「自分にとって結婚の平等とは」

2013年4月現在、米国では9つの州で同性婚が可能ですが、これらの州で結婚したところで国からは既婚者とはみなされません。結婚は男女間のものと規定した連邦法「結婚防衛法」があるからです。国が同性婚を認めないためにどんな不都合が生じているかという当事者の声を集めたBuzzFeedの記事がおもしろかったので、ちょっと紹介してみます。

詳細は以下。

かなり長い記事なので、以下、全9カップルのうち5組の声をダイジェストで集めてみました。

シャドナ・ジャクソンさんとラキーシャ・スミスさん

新居に引っ越した10日後、シャドナさんが足首を骨折。ラキーシャさんは勤続16年の連邦政府職員ですが、政府からはシャドナさんは配偶者と認められないため、FMLA(家族医療休暇法、Family and Medical Leave Act)の対象にはなれなかったのだそうです。つまり、仕事を休んでパートナーの看病をすることができなかったわけ。


パートナーが「家族」とみなされないせいで、荷解きしてない箱でぎっしりの新居に彼女をひとりで置いて出勤しなければならないというストレスを想像してみて。
Imagine the stress of having a new home, with a house full of unpacked boxes, and having to leave your partner alone because she's not considered "family."
念のため補足しておくと、これって、「そんなの自己責任で勝手に休め」っていう話ではないんですよ。FLMAが適用されれば最大で12ヶ月休むことができて、復職時に元のポジション(または元と同等のポジション)に戻れることも保証されます。パートナーの出産や、養子・里子の迎え入れのときに休むこともできます。異性愛者なら12ヶ月働けばもらえるこの権利を、同性愛者は16年間働いてももらえないというのは不平等だという話なんですよ。

カミラ・カノさんとアビー・アイザックスさん

カミラさんはコロンビア出身で、ニューヨークでアビーさんと出会いました。しかしカミラさんの学生ビザが切れたため、ふたりは仕事も友だちも家族もニューヨークに残してコロンビアへ移住。


ふたりともニューヨーク生まれではありませんが、ニューヨークが故郷だと思っているし、家庭をつくりたい場所もそこです。追放されていると感じざるを得ません。結婚防衛法が撤廃されれば帰郷して友だちや家族と再会でき、中断しているキャリアを再び始めることができます。
Even though we were not born there, we both agree that New York City is our home and is the place we wish to build our family, and we can't help but feel like we have been exiled.If DOMA was overturned, we would be able to return to our home and reunite with our friends and family as well as resume our careers.

カサンドラ・ヘリオン・ムーアさんとアシュリー・ムーアさん

ふたりはノースカロライナ在住。つき合って10年で、同性婚能州であるニューヨークで結婚しました。


でも今は、わたしと妻が、税の申告をしたり保険料を払ったりするときに独身だと述べることを強制される(そして結果として、財政的に絶えずひどい目に遭わされる)州に住むという現実に戻ってきています。自分たちのつくる家族や所帯を弁護しなければならず、妻の名(それって同性婚能州では、わたしの法的な結婚後の姓だったりするんですが)を名乗れるようになるために、裁判制度やお金のかかる法廷闘争に参加しなければならない現実に! いったいなぜこんなことが? わたしたちが結婚の聖性を破滅させるかもしれないから?

But now we are back in the reality of living in a state where my wife and I are forced to claim we are single when we file taxes and pay insurance (and consequently being punished financially), where we have to defend the family and household we are creating, where I have to go through the court system and fight costly legal battles in order to hopefully be able to carry my wife's name (which just happens to be my legal married name in several states that recognize same-sex marriage)! And why? Because we might ruin the sanctity of marriage?!

ちなみに「結婚の聖性」("sanctity of marriage")というのは、キリスト教を根拠に同性婚を否定する人がよく使う決まり文句です。

ニコール・リーフさんとキャロル・メイスンさん

サウスカロライナ在住のカップル。娘さんがいます。


わたしたちはある種の基本的人権を否認されています。それはつまり、医療面で家族の意思を代行する権利、税制上の優遇、相続、娘との法的関係などです。異性愛者の既婚者が「誓います」と言った瞬間から享受しているこれらのことは、連邦政府同性婚を認めれば、全てわたしたちにも提供されます。わたしたちはともに一生を送り、一緒に娘を育て、終生お互いの面倒をみると誓っています。生涯法的な結びつきを持つ準備も覚悟もできているのです。
Certain basic rights are denied to us: medical power of attorney, tax benefits, inheritance, and the legal relationship to our daughter. A federally recognized marriage would afford us all of these things that straight married couples enjoy from the moment they say "I do." We are committed to spending our life together, to raising our daughter together, and to taking care of each other for the rest of our lives ― and are ready and prepared to legally bind ourselves together for life.

ジョナサン・フランキさんとドウェイン・ビービさん

ドウェイン・ビービさんは軍人。パートナーのジョナサン・フランキさんはカリフォルニア在住なので、提案8号(カリフォルニア州での同性婚を禁じる憲法修正案)の影響をもろに受けています。


軍関係者の家族として、結婚防衛法のせいで生じる不平等に対処する難しさはわかっています。軍人の家庭をしっかり支えるという目的で、軍人の配偶者には給付や特典が与えられますが、ジョナサンにはほとんど与えられません。最近、同性カップルにもいくつかの給付を認めると決まりましたが、わたしたちがゲイであるために認められていないものはまだたくさんあります。
As a military family, we have found it difficult to deal with the inequalities that exist because of DOMA. Military spouses receive full benefits to support strong military families ― however, Jonathan receives very few benefits. Even with a recent decision to grant a few benefits to same-sex couples, there are many more that are not authorized because we are gay.

軍人の家族に通常与えられる給付や特典については、以下がわかりやすいです。奨学金とか買い物の割引とかキャリア形成の支援とか、いろいろあるんですよ。

あと、以前紹介したこちらのカップルの話も参考になるかと思います。パートナーが戦死しても、連絡すらこないんですよ同性カップルだと。

まとめと感想

上記の意見をごく簡単にまとめると、単にパートナーとジェンダーが同じだというだけで、これだけの不平等が生じているということになります。

  • 家族医療休暇法が適用されない(パートナーの看病で休めない、休んだら元のポジションに戻れる保証がない)
  • 国籍の違うパートナーの居住権が取れない
  • パートナーの姓を名乗れない
  • 税金や保険料で、より重い負担を強いられる
  • 医療面で家族の意思を代行する権利がない
  • 子どもとの法的関係が保証されない
  • 軍人の配偶者としての支援が受けられない

パートナーとのジェンダーの組み合わせだけを根拠に人の生活基盤をここまで脅かすというのは、はたして正しいことなんでしょうか。あたしは違うと思うな。あ、ここまで飛ばし読みしてきて「子どもを作れない関係をそこまで優遇する必要はない!」と握りこぶしを振り上げそうになっちゃった方は、ニコール・リーフさんとキャロル・メイスンさんの話をちゃんともう一度読んでくださいね。同性カップルの場合、子どもがいたってやっぱり不利な扱いを受けてるんですから。それに、同性カップルが求めているのは「優遇」ではなくて「公平に扱われること」でしかないので、そこんとこ誤解しないでもらいたいわ。