米連邦最高裁、『提案8号』の審理を開始

2013年3月26日、米最高裁カリフォルニア州同性婚を禁じる憲法修正案「提案8号」(Prop 8)についての審理が始まりました。この修正案の合憲性を疑問視する意見も出る一方、時期尚早という声もあって、「提案8号」が撤廃される可能性は低そうだとみる向きもあるようです。連邦レベルで同性愛を認めないとする「結婚防衛法」の方が、まだ撤廃される可能性が高いと言われているみたい。なお、どちらも判決が出るのは6月末ぐらいではないかと予測されています。

以下、米最高裁、明確な結論出さぬ構え―加州の同性婚禁止法を審理 - WSJ.comより引用。


【ワシントン】米連邦最高裁判所は26日、カリフォルニア州同性婚禁止問題を取り上げた審理を行ったが、結論は出さなかった。最高裁のアンソニーケネディ判事は同裁判所の訴訟の取り上げ方の一部に不満を述べたほか、ジョン・ロバーツ長官は同性婚推進派があまりにも性急に合憲化しようと行動しようとしていることへの懸念を口にした。
80分間にわたる審理が終わっても、判事たちがどのような判決を下すのか予測するのは困難だった。ロバーツ長官は、同性愛者同士の結婚を禁止しているカリフォルニア州の「プロポジション8(提案8号)」の支持者にそもそも最高裁に上告できる権利があるか否か、いくつか質問をした。上告資格のあるカリフォルニア州は、同性婚を禁止しているプロポジション8の弁護を辞退し、上訴ないし上告しなかったからだ。
連邦最高裁のリベラル派の判事4人は、同性婚を是とする論拠に理解を示すような質問をした。だが、イデオロギーの観点からすると、判事らは全米50州で同性婚を直ちに合憲とするような判決を出すことに対しては後ろ向きな姿勢を示した。
最高裁審理の最初の弁論で、いわゆる「スウィングボート」として今後の判決を左右する可能性があるケネディ判事は、同性婚推進派がその主張の理由に挙げている点を取り上げ、カリフォルニア州では約4万人の子どもが結婚を禁じられた同性の親たちと暮らしていると述べた。
ケネディ判事はプロポジション8推進派、つまり同性婚禁止派の弁護人チャールズ・クーパー氏に対し、「子どもたちは親たちが完全に認められ、完全な立場を得ることを望んでいる」と述べ、「本件ではこういった子どもたちの声が重要だ。そう思わないか」と尋ねた。
しかしこの後、同判事はこのカリフォルニア州に関する件で、各州に幅広く適用されるような判決を出すことには慎重な姿勢を示した。

審理の中で特に話題になった応答はこのあたりです。まず、ソトマイヤー判事と、同性婚禁止派のクーパー弁護士の会話。

内容はこんなです。


ソトマイヤー判事「結婚という文脈以外で、ある州が性的指向という要因にもとづいて同性愛者に利益を与えることを拒絶したり、負担を課したりすることに、なにか他の合理的な根拠や理由を思いつきますか? 同性愛者に仕事を与えないことや、何らかの給付金を認めないことや、その他の決定において、政府が性的指向を根拠におこなうことができる合理的な意思決定はありますか?」
クーパー弁護士「ありません。その点においては、何も……例を挙げるものはありません」

USTICE SOTOMAYOR: Outside of the -­ outside of the marriage context, can you think of any other rational basis, reason, for a State using sexual orientation as a factor in denying homosexuals benefits or imposing burdens on them? Is there any other rational decision-making that the Government could make? Denying them a job, not granting them benefits of some sort, any other decision?
MR. COOPER: Your Honor, I cannot. I do not have any -- anything to offer you in that regard.

上に貼ったYouTube音声には入ってませんが、このあとクーパー弁護士は、生殖の有無を根拠に同性婚を否定しようとします。

クーパー弁護士「懸念されるのはこういうことです。結婚をジェンダーと無関係なものであると定義しなおしたら、歴史的、伝統的な生殖上の目的とのつながりが永遠に絶たれてしまいます。そして結婚の目的や定義が、子どもを育てるということから、感情面でのニーズや、大人の、大人のカップルの欲望へと変えられてしまいます」
MR. COOPER: Yes, Your Honor. The concern is that redefining marriage as a genderless institution
will sever its abiding connection to its historic traditional procreative purposes, and it will refocus, refocus the purpose of marriage and the definition of marriage away from the raising of children and to the emotional needs and desires of adults, of adult couples.

しかし、上の方で引用したWSJ.comの記事にもあるように、実際には「カリフォルニア州では約4万人の子どもが結婚を禁じられた同性の親たちと暮らしている」んですよ。こんなこと、既に耳にタコができるほど議論しつくされているはずなのに、まだこんなカビの生えたレトリックを持ち出すとは。

……と思ったら、ケーガン判事がナイスな切り返しを見せてくれました。


ケーガン判事「ええと、クーパーさん、もしも州がこう言ったらどうします? 『結婚の目的は本当に生殖に置くべきであるから、55歳以上のカップルには結婚の許可を与えないことにしよう』。これは憲法違反になるのではありませんか?」

JUSTICE KAGAN: Well, suppose a State said, Mr. Cooper, suppose a State said that, Because we think
that the focus of marriage really should be on procreation, we are not going to give marriage licenses anymore to any couple where both people are over the age of 55. Would that be constitutional?

異性同士のカップルはEDだろうと更年期だろうと、それどころか睾丸や子宮がなかろうと結婚できるもんね。それなのに生殖の有無を理由に同性婚を禁止するのはおかしいってことです。いまだにここから説明しなくちゃならないなんてね。

なお、約80分間の審理全体の音声を全部聞いてみたい方はこちらをどうぞ。

文字起こししたものを読みたい方はこちら。(PDFです)