なぜ今同性婚訴訟なのか(2):ドナとトレイシーの物語
「なぜ今同性婚訴訟なのか(1): イーディスとシーアの物語 - みやきち日記」の続きです。今回は、合衆国政府が同性婚を認めないために、ある軍人女性の同性パートナーにどんなことが起こったかを紹介してみます。
詳細は以下。
トレイシー・ダイス・ジョンソンさんは、米国陸軍軍曹のドナ・R・ジョンソンさんと結婚してノースカロライナに住んでいました。しかし、連邦法である「結婚防衛法」(婚姻防衛法)は同性婚を認めていないため、軍がトレイシーさんをドナさんの配偶者として扱うことはできません。
で、どうなったか。
ドナさんはアフガニスタンで自爆テロにまきこまれて亡くなりました。29歳でした。トレイシーさんは「配偶者ではない」ので、訃報すら届きませんでした。ドナさんの姉妹から知らされて、ようやくパートナーの死を知ったそうです。なお、ドナさんと同時に亡くなった軍人の配偶者には、軍から直接連絡が行っています。異性同士の既婚者なら支給されるはずの、棺にかける星条旗も、トレイシーさんには届きませんでした。
これだけじゃないんですよ。戦没兵の同性パートナーには、遺族弔慰金が支給されません。月々の遺族給付も与えられません。米軍の住居に住む資格も認められません。愛する人と同じ軍人墓地に眠る資格も与えられません。
ドナさんのお母さんは、トレイシーさんは娘の配偶者だから、軍葬のとき棺に付き添わせてやってほしいと軍にかけあわねばなりませんでした。ちなみに棺に付き添う際には、ドナさんが戦死時に身につけていた結婚指輪と聖ミカエルのメダリオンを、軍の死傷者支援担当官に渡す必要がありました。トレイシーさんは葬儀の前夜、指輪もメダリオンももう2度と見ることができないのではないかと思い、ベッドに持ち込んで一緒に寝たそうです。結局それらは、軍からドナさんのお母さんに渡され、ドナさんのお母さんがすぐにトレイシーさんに届けてくれたのですが。
軍隊が悪いんじゃないんですよ。トレイシーさんは、軍は「できる限りのことをしてくれた」と言っています。それでも法律上、できることには限界があるんです。
YouTubeには、亡くなられたドナ・R・ジョンソンさんを偲ぶ動画が上げられています。
ドナさんの死亡証明書には、「独身」と書かれていたそうです。
相続税のみならず、このように同性カップルはさまざまな面で不利を強いられています。それは違憲ではないのか、というのが、同性婚訴訟の大きな争点なんです。
追記
2014年5月、復員軍人省がついにトレイシーさんの権利を認め、異性婚の配偶者と同等の死亡給付金を支給すると決定しました。