ゲイポルノのスター俳優、移民法のため夫と暮らせず自殺

2013年3月5日、ゲイポルノの人気男優ウィルフリード・ナイト氏が自殺しました。ナイト氏はフランス人で、9年来のパートナーで米国人のジェリー・エンリケス氏が2週間ほど前に自殺したばかりでした。ふたりはカナダで結婚していましたが、米国の連邦法ではこの結婚は法的に認められず、一緒に暮らせないことを苦にしての自殺だったとみられています。

詳細は以下。

ウィルフリード・ナイト氏というのは、こんな人ね。爽やかなイケメンだけあって、「Out」誌の「もっともホットなポルノスター」に選ばれたこともあったそうです。

国籍が違うこのカップルが一緒に暮らすためにどんなに努力してきたかは、Queertyに詳しいです。ナイト氏の親友だったマイケル・ミュー氏によると、ナイト氏は米国に住むためにポートランドの鍼治療の学校に通いさえしたとのこと。彼の学生ビザが切れそうになると、今度はエンリケス氏が必死になってカナダで仕事を探し、ルルレモンというヨガ関係の会社で働き始めました。ふたりはそのままカナダで結婚。ナイト氏は配偶者ビザを得て、カナダで暮らすことができました。

しかしこのルルレモンがいろいろと問題のある会社だったようでエンリケス氏は約1年後に職を失ってしまいます。これはつまり、次の仕事か労働ビザを手に入れない限り、配偶者ともどもカナダに住めなくなるということです。米国の連邦政府同性婚を認めていないため、米国で一緒に暮らすこともできません。

5ヶ月間必死で仕事を探したのち、2月21日にエンリケス氏はカナダのホテルで自ら命を絶ちました。ふたりが結婚式を挙げたホテルでした。

3月2日に、つまり後追い自殺する3日前に、ナイト氏はこんなタイトルのブログエントリを書き残しています。


ぼくのパートナーの生と死、そしてその教訓:合衆国の同性婚は連邦レベルで法制化されねばならない
My partner’s life and death and its lesson: US GAY MARRIAGE MUST PASS ON A FEDERAL LEVEL

内容をちょっと訳すよ。


勉強が終わる頃にはぼくのビザは失効し、ヨーロッパに送り返されることになっていた。他にどうすることもできなかった。もう一度言うが、同性婚が存在するのがカリフォルニアだろうとワシントンだろうと意味はないんだ、片方がアメリカ人でなければ適用されないんだから。ゆえに、恋に落ちているのに異性愛者ではない人は、もう終わりなんだ!
By the end of my studies, my visa was going to expire, and i would be sent back to Europe. No other way around it. AGAIN IT DOES NOT MATTER WHETHER GAY MARRIAGE EXISTS IN CALIFORNIA OR WASHINGTON, IF ONE IS NOT AMERICAN, IT WILL NOT APPLY. Therefore if you are in love but not straight, you are fucked!

同日の他のエントリによると、エンリケスさんはアメリカに家を一軒持っていて、他にナイトさんと共同購入した家も一軒あったとのこと。でもパートナーの死後、ナイトさんには何も残りませんでした。遺灰すらも。エンリケスさんの家族が、何もかも持っていったからです。ナイトさんが持っていたエンリケスさんの写真まで渡せと要求されたそうです。


最後に。9年間のあと、ぼくには何も得られなかった。彼の家族が片づけて持って行ってしまったものはみなアメリカ合衆国にあり、家族たちはいかなる段階でも、自分たちの弟を9年間愛した男と何かを分かち合おうと申し出てはくれなかった。けちな話だろ、お金じゃやっぱり彼を呼び戻すことはできないんだから。もしもぼくにすべてを遺すという遺書があったとしても、ぼくは遺されたものを彼の家族と分け合わなければならなかったろう。みんながそうだってわけじゃないのにね。悲しいことにさ。
Ultimately: after 9 years, i get nothing. His family packs away whatever is in the USA, and wont offer at any stage to share with the man who loved their brother for 9 years. And you know what it is petty: because again money will not bring him back. And even if there had been a will leaving me everything, i would have shared with the family. Not everyone is like that. Sadly.

もしも米国が連邦レベルで同性婚を認めて、ナイト氏に配偶者ビザを出していたら。ふたりは今でも笑って一緒に暮らしていたでしょう。仮に不慮の死でどちらかが亡くなっても、財産や遺灰まで持って行かれることはなかったでしょう。そう思うと、本当にやりきれないです。日本語のニュースメディアではなかなか報道されないけど、こういう国際カップルの悲劇って、シャレにならないぐらい多いのよ。

日本ではまだまだ、同性婚というと頭の中が「セックス子作りセックス子作りセックス子作りセックス子作り」とシモのことだけでいっぱいになっちゃう人が多いようです。でも、結婚って別に下半身だけのものではないはず。もっと包括的な、法によって是認される権利の話のはず。それが平等でないのはおかしい、って言ってるのに、そこが今ひとつ通じてないっぽいのが、あたしは悲しいです。もうちょっと議論を進めようよ、こんな悲劇をこれ以上繰り返さないためにも。