カナダ・ケベック州、ホモフォビアと戦うキャンペーンでクイズとCMをリリース

カナダのケベック州が、クイズサイトやCMなどを通じてホモフォビアと戦うキャンペーンを始めました。これは同州の、710万カナダドル(約6億7千万円)以上をかけた5年計画のプロジェクトの一部なんだそうです。

詳細は以下。

実質的にはこれ、ホモフォビアのみならず、バイフォビアやトランスフォビアとも戦うキャンペーンみたい。クイズもCMもすごくおもしろかったので、ちょっと紹介してみます。

「本当に偏見がない?」('Really open') ― 三択形式でフォビアの有無を問うクイズサイト

三択クイズサイト'Really open'はこちらです。

最初に性別と年齢を入力すると、それに応じたクイズが出てくるようになっています。でも、どちらも入力せずにanonymousでクイズを楽しむこともできます。試しに「女性」「25歳以上」でやってみたところ、こんな質問が出てきましたよ。

  1. (机に向かって絵を描いている男の子の映像をバックに)この小さな男の子は本と、恐竜と、音楽が大好きです。
    • この子はふたりのママが大好きです。このことが不快だと思いますか?
  2. (買い物をしている中年女性の映像をバックに)ルーシーはいつも親切で笑顔を絶やさない人です。
    • でも、ルーシーはずっと「ルーシー」だったわけではありません。昔は「ルーク」でした。このことが不快だと思いますか?
    • 彼女が同僚だったらどうですか?
  3. (ベンチで並んで座っている男性たちの映像をバックに)この2人の男性には共通点が多いです。
    • ふたりは人生も共に分かち合っています。このことが不快だと思いますか?
    • ふたりのうち片方があなたの兄弟だったらどうですか?
  4. (白衣姿で働く女性医師の映像をバックに)この内科医は何年もの経験があり、患者に大人気です。
    • この内科医は以前からずっとバイセクシュアルです。このことが不快だと思いますか?

回答は「全く不快ではない」「少し不快」「とても不快」の三択で、最後の結果ページからはホモフォビアについての説明ページに飛ぶことができるようになっています。

うまいなと思ったのが、いくつかの質問が二段構えになっていることですね。自称「偏見がない」人たちには、「でも、自分の家族がゲイだったら絶対嫌」だの、「友だちがレズだったら襲われそう」だのと矛盾したことを言い放つ人が山のようにいますからね。あと、質問の最後に医者という職業を持ってくるあたりもうまいなあと。ヘテロの異性医師には平気で胸を開けて聴診器をあてさせるくせに、バイセクシュアルとなるととたんに「嫌だ」と感じるのだとしたら、その人は自意識過剰かつバイフォビックだと思うわ。

「空港での1コマ」&「サプラーイズ!」 ― 偏見持ってると驚かされるCM

2013年3月3日から放映されているCMがこちら。フランス語だけど、映像だけでじゅうぶん意味がわかります。どちらもとてもキュートで、にやりとさせられます。

The Provinceによると、CMの最後のナレーションは、「これで(このオチで)、あなたが20秒前に考えていたことは変わりましたか?」と言ってるんだそうです。予備知識なしで勝手にヘテロカップルの話だと決めつけて見ていると、最後であっと驚くでしょ、という意味ね。

バックラッシュも起こっている模様

もう消されちゃったみたいだけど、ちょっと前までYouTubeに上げられてた(カナダの?)ニュース番組の映像では、このCMについて賛否両論があると報じられていました。コメント欄では、おなじみの「納税者のカネをこんなことに使うな」論もぶちあげられてました。スクリーンショットを撮っておけばよかったわ。

The Provinceによると、2013年3月3日にこのCMの放映が始まって以来、ケベック政府に書面で届いた苦情は9件。そのほとんどが、政府の広告で2人の男性/女性がキスしていることにショックを受けた人からのものだったそうです。ネット上でのバックラッシュはもっと多いとのこと。

でもさ、たかが同性同士のキスシーンにいちいちショックを受ける人が少なくないからこそ、こういうキャンペーンが必要なわけですよ。「納税者のカネ」ったって、同性愛者だって納税してるんだからね。そのお金を、なんで異性愛者のためだけに使わにゃならんの。

なおケベック政府が900人の州民を対象に行った調査によると、回答者の90パーセントが「自分は性の多様性に偏見を持っていない」と答える一方で、40パーセントが「公の場で男性ふたりがキスしているのを見るのは不快」と回答したそうです。そういうのを偏見っていうのよ。この州のみならず、世界中に必要なんじゃないかしら、こういうキャンペーン。