クリントン元米国大統領、結婚防衛法を打倒せよと主張

米国の第42第大統領ビル・クリントン氏が、「ワシントンポスト」の意見記事で、結婚は男女の間だけのものに限ると規定した同国の「結婚防衛法」(Defense of Marriage Act、DOMA)を打倒せよと訴えています。

……でも、そもそも90年代にこの法案にサインしたのは、クリントン氏本人なんですけど。

詳細は以下。


1996年、わたしは結婚防衛法にサインした。わずか17年前のことではあるが、今とはとても違った時代だった。連邦のどの州でも同性婚は認められておらず、ましてや法的権利も手に入らなかったが、その方向に向かって進んでいる人はいた。結果として、ワシントンではありとあらゆる肯定的な反応が渦を巻いていた。非常に情け容赦のない反応もあった。3月1日に、元上院議員たちから成る超党派グループが法廷助言者による意見中で述べたように、DOMAとして知られているこの法案を支持した人の多くは、「この法案を通過させれば、憲法修正案を定めて同性婚を禁止しようとする動きが和らぐだろう、それで1世代かそれ以上の間続いてきた議論が終わるだろう」と信じていた。DOMAがわたしのデスクへとやってきたのは、そのような状況下であり、535人の国会議員のうち反対者は85人しかいなかった。
In 1996, I signed the Defense of Marriage Act. Although that was only 17 years ago, it was a very different time. In no state in the union was same-sex marriage recognized, much less available as a legal right, but some were moving in that direction. Washington, as a result, was swirling with all manner of possible responses, some quite draconian. As a bipartisan group of former senators stated in their March 1 amicus brief to the Supreme Court, many supporters of the bill known as DOMA believed that its passage “would defuse a movement to enact a constitutional amendment banning gay marriage, which would have ended the debate for a generation or more.” It was under these circumstances that DOMA came to my desk, opposed by only 81 of the 535 members of Congress.


法案にサインしたとき、わたしは「この法律は、激烈で時に争いの種になるようなレトリックに取り囲まれているが、この法の施行が差別に言い訳を与えるものであると理解されるべきではない」と勧告する声明を含めた。今これらのことばを読むと、差別に言い訳を与えるよりなお悪いことに、この法律自体が差別的なのだということがわかる。結婚防衛法は、覆されねばならない。
When I signed the bill, I included a statement with the admonition that “enactment of this legislation should not, despite the fierce and at times divisive rhetoric surrounding it, be understood to provide an excuse for discrimination.” Reading those words today, I know now that, even worse than providing an excuse for discrimination, the law is itself discriminatory. It should be overturned.

えーと。

DOMAにサインしたのは時代のせいで、多数決のせいで、議論を終わらせるためで、憲法修正からゲイを守るため。それにぼくはちゃんと『差別の言い訳にしちゃダメ』って言ったもん。ぼく悪くない。でも時代が変わったし、DOMAはひっくり返さなくちゃねー」って解釈でいいのかしら。なんか、モニカ・ルインスキー事件のときの弁明と同じぐらい、アポロギアのテクニック臭がぷんぷんするんですけど。

もちろん、元大統領がDOMAに反対するというのは基本的にいいことだと思うんですけどね。だいたい、「結婚を(同性婚から)防衛する」という概念のアホらしさや理不尽さは、先日紹介したこんなジョークCMを見れば一目瞭然ですし。折しも連邦最高裁で、3月26日にカリフォルニア州のProp 8(同性婚を認めないとする法)についての、そして3月27日にDOMAについての口頭弁論がおこなわれることになっていて、タイミング的にもばっちりではあります。あと、90年代にはどちらの党もゲイの権利なんてものについてはさほど熱心ではなく、うっかりDOMAに拒否権発動したらクリントンの政治的生命が危うかっただろうってことも、わからんではないのよ。

でもねえ。

やっぱりこれ読んでると、もやもやするんですよ。レトリック満載の政治的に正しい意見記事を出すより、ひとことはっきり謝ってくれればよかったのに。と思っちゃうのは、あたしが無駄に情緒的な日本人だから? ううむ。