「同性愛者だと思われてもかまいません」『プリティ・リトル・ライアーズ』のシェイ・ミッチェル語る

日本でも放映されているTVドラマ『プリティ・リトル・ライアーズ』でレズビアン役を演じているシェイ・ミッチェルが、「ティーン・ヴォーグ」というファッション誌の表紙を飾り、インタビューにも答えています。同性愛者の役をやることに関して、インタビュアーの陳腐な質問に対する答えがすごくよかったので、抜粋して紹介してみます。

元記事はこちら。

以下、TVは「ティーン・ヴォーグ」、SMはシェイ・ミッチェルの略です。


TV:レズビアン役をやることで、何か狼狽みたいなものはあった?
SM:いいえ。キャスティング・ディレクターさんからエミリーは同性愛者だが大丈夫かと言われましたが、迷いはありませんでした。同性愛者の友だちはたくさんいるし、わたしのおばには同性の恋人がいます。ただのあたりまえのことなんですから。それにファンのみなさんの(わたしの演じたエミリー像への)リアクションもすごくいいんです。わたしは「全身黒のゴス服を着て隅っこでランチを食べているレズビアン」を演じたりしてませんからね。ポスターを見てどのキャラがレズビアンなのか指させるようにしておく必要は別にないわけで、わたしにとってはそれが本当に大事なことなんです。
TV: Totally. Did you have any trepidation whatsoever about playing a lesbian?
SM: No. The casting directors told me Emily was gay and asked if I was cool with that, but I didn't have to think twice. I have a lot of friends who are gay; my aunt had a girlfriend. It's just normal. And the way that fans have reacted [to my portrayal of Emily] has been amazing: I'm not playing the gothic chick dressed in all black who eats lunch in the corner and is a lesbian. If you look at the poster, you wouldn't necessarily be able to pinpoint which one of us is the lesbian, and that was really important to me.

この「ポスターを見てどのキャラがレズビアンなのか指させるようにしておく必要は別にない」っていう指摘、すごく重要だと思うんです。単なるガール・サスペンスである『プリティ・リトル・ライアーズ』みたいな作品で、「ほらほらこのキャラ、レズなんですよ! レズ! ここにレズがいまーす!」とアピールする必要なんてまったくないし、だいたいノンケが考える「いかにもレズビアン」な表現って、激しく的外れなことが多いし。どこにでもあたりまえにいるレズビアンの姿をあたりまえに描いてみせたからこそ、ファンたちはこんなに喜んでるんですよね。


TV:誰かがあなたのことを検索するとき、Googleサジェストで「シェイ・ミッチェル 同性愛者」が第一候補になってもそれはそれでいいと?
SM:その通りです。わたしのおばあちゃんはそれを見て、「何これ?」って感じでした。人からはいつも「あなたはあのキャラクタみたいに同性愛者なの?」と聞かれてばかりです。でも答える必要はない気がします、正直言ってどうでもいいことですから。大事なのは、だれかが「この役を演じてくれてありがとう」と言ってくれること。人を楽しませることと、人の人生にちょっとしたポジティブな影響を与えることとは別物で、だからわたしにとってはファンに会うことが大切なんですよ。ファンと会ったり挨拶したり、サインをしたりすることは、いつでも大好きです。
TV: And if "Shay Mitchell gay" is the first thing Google suggests when someone searches for you, so be it?
SM: Right. My grandma saw that and was like, "What is this?" People always ask me, "Are you gay like your character?" But I don't feel like I need to answer, because honestly, it doesn't matter. And it means so much to me when someone says, "Thank you for playing this role." It's one thing to entertain people, but it's something else to actually have a small impact on their life in a positive way, and that's why it's important for me to meet my fans. Whenever there's a meet and greet, whenever I can do a signing, I love that.

Googleサジェスト云々って、なんでこんなことを訊きたがるんでしょうかねえ、インタビュアー。これについては、元記事コメント欄のcycloneなる方の意見が秀逸だったので、ちょっと紹介してみます。


こういう質問をし続ける記者にはイライラさせられる。だって、同性愛者の役を演じる女優に実生活でもレズビアンなのかと訊いたり、人があなたのことをレズビアンと思うのではと訊いたりするのは、テレビで医者の役をやった人に実生活でも医者なのかと訊くのと同じだから。こんなの常識の問題

This is something that irritates me about journalists who continue to ask that question because if you think about it asking an actress who plays a gay character if either they are gay in real life or if people think they are gay in real life is like asking someone who plays a doctor on TV if they are a doctor in real life. it is a common sense question and answer

そうだそうだー!
よっぽどアタマが特殊な人を除いて、誰も『白い巨塔』を見たからって、田宮次郎が本物のお医者さんだなんて思いません。たとえが古ければ、2003年度版の唐沢寿明でもいい。『振り返れば奴がいる』の織田裕二でも、『Dr. HOUSE』のヒュ−・ローリーでも、『グレイズアナトミー』のエレン・ポンピオでもいい。医者以外でも同じこと、誰もユル・ブリンナーは本当に顔がパカッと開いて機械が出てくるなんて思わない。ダニエル・ラドクリフがロケ地までホウキに乗って移動するとも思わない。ジャック・ニコルソンが雪に埋もれて斧を片手に凍死してるとも思わない。

「演じる」っていうのは、本来そういうことのはず。なのに、なぜか役者が同性愛者を演じた途端に「実生活でも同性愛者なのでは」と思ってしまう人が続出するのは、いったいどういうことなんでしょう。君らは「噛みつき魔」ことフレッド・ブラッシーの攻撃を真に受けてお茶の間でショック死するおばあちゃんか。ゲイキャラ・レズビアンキャラを見た途端に、(興奮のあまり?)リテラシーが1960年代まで後退しちゃうのか。以前からこういう下司の勘繰り現象にはうんざりしていたので、シェイ・ミッチェルが、「どうでもいいこと」と言い切ってくれたのには、心の底からすっきりしました。

また、シェイの「この役を演じてくれてありがとう」と言ってもらえることが大事だという発言には、『Glee』のナヤ・リヴェラや、『L.A.ロー』のアマンダ・ドノホーの言っていたことをすぐさま思い出しました。ふたりとも女性を愛する女性の役をやったことで、レズビアンのファン層からものすごく支持され、かつ感謝されてるんですよね。で、どちらもそういったファンを大切にしてる。どちらも本人自ら語ってるんで、ちょっと見てください。

下の方の動画でも触れられてますが、アマンダ・ドノホーというのは、1991年にプライムタイムのTV番組としては史上初の女性同士のキスシーンを演じた人です。で、やっぱり役柄と役者を混同する人がたくさん出て、「殺す」と脅迫されたりもしたとか。でもアマンダはそんな人たちのことを笑い飛ばし、この役を演じたことに誇りを持っていると話しています。こういう先人のがんばりが『プリティ・リトル・ライアーズ』にまでつながって、今ティーンエイジの観客を励ましてるんだと思うと、なんか目頭が熱いです。あたしは応援するわ、シェイ・ミッチェル!