オーソン・スコット・カードのスーパーマンからアーティストが撤退

アンチゲイな作家をストーリー担当にしたことで議論の的になっているアメコミ『スーパーマンの冒険』("Adventures Superman")から、作画担当のクリス・スプラウス氏が撤退しました。

詳細は以下。

このアンチゲイな作家というのは、『エンダーのゲーム』などで知られるオーソン・スコット・カード氏。「同性への欲望は拘束衣ではないのだから変えられるはず」だの、「同性愛者は不穏な誘惑、レイプや性的いたずら、虐待などのせいで同性愛になった」だのという香ばしい発言で有名な人です。彼はまた、同性婚に反対する「National Organization for Marriage」という団体の役員でもあります。

漫画出版社のDCコミックがこのカード氏を起用して以来、書店やファンから大規模なボイコットが起こりました。カード氏を辞めさせるよう要求するオンライン署名には、3月6日現在までに1万6千人以上の署名が集まっています。クリス・スプラウス氏はこの騒ぎを見て、今回の物語の担当から降りると決めた模様。


「この結論に至るまでにはずいぶん考えましたが、この物語の作画担当から降りると決めました」とスプラウスは火曜に出された声明で語った。「この話を取り巻くメディアは、実際の作品の価値を減じるところまで行きついてしまいました。それはわたしにとって快適なことではありません。わたしのDCコミックとの間の絆は以前と変わらず強いもので、次のプロジェクトで彼らと仕事をすることを楽しみにしています」
"It took a lot of thought to come to this conclusion, but I've decided to step back as the artist on this story," Sprouse said in a statement released Tuesday. "The media surrounding this story reached the point where it took away from the actual work, and that's something I wasn't comfortable with.My relationship with DC Comics remains as strong as ever and I look forward to my next project with them."

DCコミックはスプラウス氏の決断を「全面的に支持し、理解している」そうで、現在別のイラストレーターを探しているところだとのこと。

この『スーパーマンの冒険』の発売予定日は、デジタル版が2013年4月29日、印刷版が5月初頭。実はこれ、10ページのショートストーリーを集めたアンソロジー・シリーズなのだそうで、とりあえず5月出版分にはカード氏の書いた話は出て来ず、他の原作担当&イラスト担当による話だけが収録されることになるみたい。新しいイラストレーターが見つかり次第、またスケジュールを調整するとDCコミックは説明しています。

元記事を読んでてもやもやしたのは、スプラウス氏もDCコミックも、結局オーソン・スコット・カード氏の何が問題視されているのかについてはひとことも言及していないことですね。保身なのか、大人の事情なのか。いくら絵描きが変わっても、弱者の味方のはずのスーパーマンのお話をこれだけコテコテの偏見持ちに担当させ続けたんじゃ、「この物語をとりまくメディア」は黙らないと思うんですけどねえ。