ラッパーのマース、ミュージックビデオ『アニマル・スタイル』でホモフォビアに反対
MURS, "ANIMAL STYLE" | from LOVE & ROCKETS VOL. 1 | produced by EMBASSY - YouTube
ラッパーのマース（Murs）が、「アニマル・スタイル」という曲の動画（上掲）で、ホモフォビアへの反対を表明しています。
詳細は以下。
マースがこのビデオの中で演じているのは、クロゼットな高校生ゲイ・ロデリックの役。ロデリックは同じ高校に通うジョナサンと恋人同士ですが、ホモフォビックな友人たちにはそのことをひた隠しにしています。ジョナサンは2人の関係を公にしようとし、そのためにある悲劇が起こります。
「悲劇」の部分の歌詞はこう。日本語訳は脚注につけておきますので、ネタバレが嫌な人は先に動画をご覧になってください。
"Shot him right between the eye, then turned it on himself because he refused to live a lie.*1"
以下、YouTubeにつけられた公式コメントから一部訳してみます。
「アニマル・スタイルはたくさんの理由から作った歌だ」とマースは説明している。「第一の理由は、自分と親しいカミングアウト済みの人たちや、まだカミングアウトしていない人たちを支持するということ。これはラブソングでもあるが、そのこと自体は自分にとっては別に新しくはない。でもこの歌で、聴き手にこう自問する気を起こさせたかったんだ。『同じジェンダーの2人が分かち合う愛は、自分が異性のパートナーと分かち合う愛と本当にそんなに違うのか？』と。最後の理由は、ヒップホップ・コミュニティの中に、ティーンエイジャーの自殺や、いじめや、ヒップホップ文化に広く行き渡っているアンチ同性愛的な意見についてはっきり話す人がいるということがとても重要だと思ったということ。たとえ見た人の中に不快に感じる人が出ようと、注意をひきつけるビデオを作らなければならなかったんだ。
Animal Style is a song I did for many reasons," Murs explains. "The first was to be an advocate for people close to me who are out, and those who have yet to come out. It's also a love song, which is nothing new for me. But with this one I wanted to challenge the listener to ask themselves: Is the love shared by two people of the same gender, really that different than the love I have for my partner of the opposite sex? And finally, I just felt it was crucial for some of us in the hip hop community to speak up on the issues of teen suicide, bullying, and the overall anti-homosexual sentiment that exist within hip hop culture. I felt so strongly about these issues and this song that I had to do a video that would command some attention, even if it makes some viewers uncomfortable.
この動画、ベタと言えばベタな展開ですが、いちばん最後に出てくる「本当だったらこんな風だったのに」っていう映像の部分が悲しくてねー。英語が苦手でも、映像だけでストーリーはわかると思うので、ご興味がおありの方はぜひご覧になってください。というと、「おまえいつも『レズの悲劇』みたいな百合ものを批判してるくせに！ 矛盾だ！」みたいに激怒する人が出てきそうなので一応言っておきますが、人の不幸を「あらあらおかわいそうに」と他人事として消費するための表現と、ホモフォビアへの怒りや悲しみを表明するための表現とは全然違いますよ。ここまで言ってもまだ納得できない人は、上で引用した歌詞の"he refused to live a lie"（彼は偽りの人生を生きることを拒んだ）という部分を噛みしめた上で、以下の本とか読むといいと思うよ。
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 | It Gets Better: Coming Out, Overcoming Bullying, and Creating a Life Worth Living Dan Savage Dutton Adult 2011-03-22 売り上げランキング : 150832 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
シェリー・ライトの自伝については、こちらに感想を書いた通り。『It Gets Better』の方は今読んでるところだけれど、動画のロデリックやジョナサンとたいして変わらない立場のLGBTユースたちが山のように登場しますよ（しかも全部実話）。マースのビデオ『アニマル・スタイル』は、ベタな物語ではあるにせよ、こういう生身の感覚としっかりつながっているとあたしは思います。
*1:「彼の目の間を撃ち抜いて、それから銃を自分に向けた、なぜなら彼は偽りの人生を生きることを拒否したから」
