『優しいおとな』(桐野夏生、中央公論新社)感想

優しいおとな優しいおとな
桐野 夏生

中央公論新社 2010-09
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格差社会が現状よりさらに激しい近未来(?)の日本で生き抜くホームレス少年「イオン」の物語。どうにももやもやとした読後感がぬぐえない本でした。この本の主題は、たぶんケミカルとボンズの言い合いの場面(p. 287)によって象徴されていると思うんですが、その後にくるオチがあれだというのには拍子抜け。あれじゃまるで、家族マンセー結婚マンセー子どもマンセーのハリウッド映画みたい。血縁マンセーなところは非常に日本的でもありますが。あたしは前半の、したたかな野良猫みたいなイオンが好きだったよ。同作者さんの『OUT』『グロテスク』は好きですが、そんなわけでこの本はあたしにはあまり合いませんでした。