『花の鎖』(湊かなえ、文藝春秋)感想

花の鎖花の鎖
湊 かなえ

文藝春秋 2011-03-08
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毎年届く謎の花束。差出人のイニシャルは「K」
……という謎(帯より)を軸とし、3人の主人公による一人称視点で綴られていくミステリー。いやあ、すごかった。湊かなえの小説には「ぐいぐい引き込まれ、後半で圧倒され、読み終わった瞬間『そうだったのか!』ともう一度頭から読み返したくなる」という特徴があると思うんですが、この作品も間違いなくその系譜にあります。特に最終章のスペクタクルといったら、もう。ああ、こういうのがあるから本を読むのってやめられないんだよ!
お話の仕掛けそのものは、巻の途中である程度わかるようにはなっているんです。真相をうっすら暗示する描写がそこここに散りばめられているため、早い人なら第1章、遅い人でも第5章で「これはひょっとして……」と気づくのではないかと思います。この作品がすごいのは、それでもなおかつ第6章で「そうだったのか!」と唸らされまくるところです。そこまでうっすらとしか見えていなかった全体像がすさまじい勢いで補完され、圧倒的なスケールで立ち上がってくるこの最終章は、衝撃のひとこと。ただの「名探偵、皆を集めてさてと言い」型の謎解きなんかとはまったくちがう、分厚い人間ドラマがそこにあります。伏線の緻密さ・膨大さと、人物描写のうまさがあってこそ成り立つ物語ですねこれは。
余談ですけど、この小説を読むときんつばが無性に食べたくなって困ります。何も入っていないプレーンな「梅」(読めばわかります)タイプのを買ってきて、コーヒーと共に味わいながら読み返してみようかと思っているところです。お菓子が重要な役割を果たすミステリというとジョアン・フルークの「お菓子探偵ハンナ」シリーズがありますが、日本の作品で、しかもきんつばという地味めのおやつが鍵になるお話というのは初めて読んだ気がします。そういう意味でも、とても面白かったですね。