英国が数学・地理・理科などの授業で同性愛について教える授業計画に着手

2011年2月、英国が、数学・地理・理科などの授業で子どもたちに同性愛について教える授業プランに着手するそうです。これは政府の支援している「ゲイ・コミュニティを讃え、世に知らせる(celebrate)」運動の一環だとのこと。

詳細は以下。

これは教員養成・開発機構(Training and Development Agency for Schools, TDA)から35000ポンド(約460万円)の補助金を受けた計画により、4歳児のために立案された授業プランだとのこと。子どもたちにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーについて教えることを奨励するもので、2011年2月の「LGBT歴史月間」開始とともに公式に着手されるのだそうです。

カリキュラム全般にわたるこの授業プランはすべての学校に提供され、学校はこのプランを採用するかしないかを選ぶことができるとのこと。

具体的にどの教科にどんな内容があるかというと、こんな感じです。

数学
国勢調査の結果を見て、人口の中に同性愛者が占める数を調べることで統計を学ぶ。また、数学の問題の中で、同性愛者の登場人物を使う。
理科
コウテイペンギンタツノオトシゴなど、オスが子育ての主要な役割をつとめる動物について学ぶ。また、子どものいる同性カップルを含めたさまざまな家族形態について話し合う。
地理
サンフランシスコのカストロ地区の、1960年代のアイルランド労働者の街から世界でもっとも「ゲイな地区」への変遷について調べる。なぜ同性愛者がこの街に集まったのか考える

他に、技術(Design and technology)の時間に同性愛者の権利運動のシンボルを作るとか、英語の授業で同性愛者のキャラクタを使ってLGBT用語を教えるなどのプランもあるとのこと。もっと小さな子どもに対しては、同性カップルの画像を使うことや、オス同士のペンギンが雛を育てた実話を元にした『タンタンタンゴはパパふたり』のような絵本を使うことが提案されているそうです。

保守派議員などから批判もあるそうですが、あたしはこの授業プラン、とてもいいと思います。教育の場で人間がすべて異性愛者であるかのごとくふるまうのは、いわゆる「隠れたカリキュラム」だと思うからです。

一昔前の日本の英語教科書では、登場する外国人はすべてアメリカ白人やイギリス白人でした。「英語は白人の言語」という価値観が、暗に示されていたわけです。また、これは英語以外でもそうですが、教科書の中で家事をしているのは圧倒的にお母さんか女の子ばかりでした。こちらは「家事は女の仕事」というイデオロギーを刷り込む役割を果たしていました。最近は、そうした描写への反省から、英語の教科書にはケニア人、中国人、韓国人、ネパール人、日系アメリカ人など、さまざまなキャラクタが登場するようになっています。性役割に関しても、お父さんとお母さんが一緒に家事をする場面が出てきたり、女の子のなりたい職業が医師や警官だったりするようになってきました。でも、性的指向については、せいぜい保健の授業で教えられるだけ。他の教科の登場人物はみな異性愛者という暗黙の前提があるように思います。

いくら言語メッセージで「平等は大事」と教えたところで、非言語の部分でせっせと異性愛主義を浸透させ続けていたら、マジョリティにとって都合のいい序列はいつまでたってもなくなりません。そういう意味で、今回の英国の授業プランには大賛成です。

Topixのフォーラムの、米国ミシガン州の"Gay Mom"さんの意見に深く共感します。


50年代には、私の教科書には白人しか出て来ませんでした。ディックも、ジェーンも、サリーも、非白人の友達はひとりもいませんでした。クリスマスのおもちゃのカタログに載っていた赤ちゃん人形は、白人の赤ちゃんのものだけ。社会の文化的、民族的な構成は無視されていました。真実が無視され、隠され、捨てられてしまうことは本当にあるのです…でも、それでも真実はそこに存在するんです。
In the fifties, all my school books had only white people in them. Dick, Jane and Sally did not have any friends that were non-white. The Christmas toy catalogs showed only white baby dolls. The cultural and ethnic make-up of our society was ignored. The truth CAN be ignored, hidden, dismissed....but it is there, regardless.

単語・語句など

単語・語句 意味
quango 特殊法人、準独立政府機関、独立公共機関[機構]
initiative 第一歩、手始め、開始
drive 運動
Training and Development Agency for Schools 学校研修開発庁、教員養成・開発機構